神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
契約した後のことは、ひとまず置いておこう。

それよりまず、この暴走ホウキを止めるのが先決だ。

今はすぐりの糸と毒によって、大人しくしているものの…。

いつまた動き出すか、分かったものじゃないからな。

その前に、何か対策を考えておかないと…。

…しかし。

「俺達に契約者の資格はないのか?」

「…どうだろう…。一応、魔導師であることが契約の大前提だから…大丈夫だと思うけど」

じゃ、ここにいる全員が『眠れる森の魔女』と契約する資格があるってことか。

が、誰を選ぶか、誰も選ばないかはホウキ様の自由。

俺達には決められない。

せめて、自分で自分を売り込めたらな。

俺と契約してくれ、って。

ホウキに人の言葉が分かるなら、の話だが。

しかし、魔導師であることが前提条件なのか…。

ってことは、うちの…イーニシュフェルト魔導学院の生徒なら、契約の資格はあるってことか…。

生徒に契約を押し付ける訳にはいかないが、ホウキが勝手に生徒を選んだら、面倒なことになるな。

契約するなら、ここにいる七人の誰か…。

…いや、出来れば令月とすぐりにも背負わせたくないから、五人の教師のうちの誰かだな。契約するなら。

で、シルナは一度、イーニシュフェルトの里時代に、ホウキに拒絶されている訳だから…。

実質、選ばれる可能性があるのは…俺とイレースと、ナジュと天音の四人のみ。

…少なっ…。

そのナジュだって、二度も土手っ腹貫かれてる訳で。

契約したいと思ってる相手の腹を、串刺しにはしないだろう。

…ってことは、契約の可能性があるのは実質三人?

しかも…イーニシュフェルトの里の人々が勢揃いで臨んでも…その、亡くなった魔導師以外の人とは契約出来なかったんだろう?

それなのに、俺達三人のうちの誰かと、都合良く契約してくれるとは…とても…。

「何とか…俺達の誰かと契約してくれないもんかな…」

「私はお断りですけどね。得体の知れないホウキなど」

そう言うなよ、イレース。

俺だって気は進まないんだぞ。

契約したらどうなるのか、全然分かってない状況なんだから。

「僕、二回土手っ腹撃ち抜かれてるんですけど。それでも契約してもらえるんですかね?」

「…それは怪しいところだな」

二回殺されてるのに、契約もクソもないわな。

選んでくれれば良いのだが、限りなく無理そうだ。

…どうやって、『眠れる森の魔女』様と契約したら良いものか。

再びホウキが復活する前に、何かしらの対策を考えなくてはならない。
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