神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
自分が『眠れる森の魔女』の契約者になることで、この魔法道具を黙らせようと思っていたけど。

やっぱり無理そうだ。

既に、イライラマックス状態なんだもん。

「どーしよ。火山のマグマにでも放り込む?」

「水をぶちまけて凍らせてから、南極にでも捨ててきたらどうかな」

令月とすぐりも、破壊することの方を考えている。

「いっそ、復活出来ないほど粉々に爆破しては?…って言っても、僕ならそれでも生き返るから、このホウキもそれくらいなら復活しそうですが」

腸活中のナジュも、そんな提案をした。

木っ端微塵に破壊して…それでホウキが消滅するなら、話は早いんだが。

「どうだろう…。『眠れる森の魔女』については、イーニシュフェルトの里で一通り試したからな…」

シルナは腕組みをしてそう言った。

壊すのも簡単じゃない、ってことだ。

でも、契約するのも同じくらい大変だから。

だったら、壊す為の方法を考えた方が良い。

「ルイーシュに頼んで、めちゃくちゃ遠い空間に捨ててきてもらうとか…」

良い方法だと思わないか。

ルイーシュなら、どんなに遠くの異次元でも、得意の空間魔法でひとっ飛びだからな。

すると。 

「聖魔騎士団にいる『死火』の守り人に、焼き尽くしてもらうのはどうでしょう」

と、ナジュが言った。

成程、無闇のことだな?

それも良い案かもしれない。

神殺しの魔法とさえ言われた、伝説級の魔導書である『死火』。

その守り人である無闇なら、いかに不死身のホウキと言えど、炭にしてくれるかもしれない。

アリだな。

「いっそ、ホウキの方が諦めるまで拷問にかけようか。熱湯と氷水に交互に浸けて…」

「いや、それは甘いよ。地面に逆さまに埋めて、マッチで少しずつ炙ろう」

残酷。

相変わらず、発想が残酷な元暗殺者組である。

「ご、拷問か…。試したことはないけど…。有効、なのかな…?」

シルナは、半信半疑で首を傾げていたが。

まぁ、やれることがあるならやってみるべきだろう。何でも。

いい加減、俺もそろそろ腹が立ってきたからな。

この鬱陶しいホウキを、どうにか破壊出来るものなら…何でもする所存。

…なのだが。

「…天音、お前は何をやってるんだ?」

「えっ…」

皆が、『眠れる森の魔女』を破壊することを考えているところに。

天音だけは、ホウキを破壊する方法について提案することはなく。

その代わりと言わんばかりに…天音は。

…ホウキについた、ナジュの血糊を掃除していた。

タオルを使って、ホウキの柄にこびりついたナジュの血をゴシゴシ拭いていた。

…本当に、何やってるんだ?
< 359 / 634 >

この作品をシェア

pagetop