神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
突如、不可解な動きを始めた『眠れる森の魔女』を。

令月の小太刀とすぐりの糸が、バラバラに切り刻んだ。

あまりに一瞬の出来事で、止める暇もなかった。

お、おいおい。

「お前達…!」

今、ホウキが変な動きしてただろ。

それをお前ら、問答無用で切り刻むなんて…。不意打ちも良いところだろう。

…しかし。

「敵の油断は、こちらの好機。逃す手はない」

「動きが鈍いうちに切っておかないと。皆、何でボーッとしてるのさ」

元暗殺者である二人は、隙を見せた相手に容赦なかった。

そうか…まぁ、そうだよな。

この二人に、容赦や情けを期待する方が間違っている。

倒せる相手は、倒せるうちに倒す。

俺達みたいに、のろのろと決断を先延ばしにすることはない。

敵に情けをかけて、返り討ちに遭って苦しむのはこっちなのだ。

そう思えば、情けをくれている余裕はない…よな。

それは確かに…この二人が正しいのだけど…。

でも…さっきの『眠れる森の魔女』の動き…。

明らかに、これまでと違っていた。

ナジュを狙ってたはずなのに、天音が前に出て庇った途端、攻撃を仕掛けてこなくなった。

あれは一体…?

ホウキが何を考えてるのか、さっぱり分からない。

そもそも、本当にあのホウキ…自分の意志があるのか?ホウキなのに?

「ナジュ…。お前、得意の読心魔法で、ホウキの心は読めないのか」

こんなときに、ナジュの読心魔法が役に立つのではないか、と思ったが。

「ホウキに心はありませんからね。無理です」

やっぱり無理なのか。

じゃあ、さっきの不可解な行動は一体…。

ますます、謎は深まるばかり。

しかし、油断をしてはいけない。

さっきは攻撃してこなかったとはいえ、次も攻撃してこないとは限らないのだから…。
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