神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
本腰を入れて、童話シリーズ問題を解決しなければならない。

そんな切羽詰まった状況だというのに。

放課後の学院長室では。

「よし。じゃあこれから、ティーパーティーを開催します!」

「…」

頭がお花畑なシルナは、嬉しそうに宣言した。

テーブルの上には、大量のチョコ菓子が並んでいる。

巨大なチョコケーキを筆頭に、チョコマフィン、チョコパイ、フォンダンショコラ、チョコブラウニー。

トリュフチョコ、チョコプラリネ、ボンボンショコラの豪華三種盛り。

チョコタルト、チョコパフェ、チョコムース等々…挙げ出すと切りがない。

よくもまぁ、こんなに集めたものだ。

ちなみにドリンクは、熱々の濃厚ホットチョコレートだった。

もう、部屋の中がチョコの匂いで充満して、吐き気を催すレベル。

それなのに、シルナは超うきうき顔。

頭の中に砂糖とカカオ豆が詰まったシルナにとっては、夢の空間なんだろう。

…楽しそうで何より。

「…どうしたんだよ、これは…」

常日頃、チョコ菓子ばかり食らってるシルナだが。

今日はまた、随分気合が入ってるな。

どういう心境の変化だ?

「いやね、最近、童話シリーズのせいで皆がお疲れなんじゃないかなぁと思って」

と、シルナは答えた。

それは…確かに疲れてるけど。

「疲労回復には、糖分の摂取が一番!そして糖分の摂取には、チョコレートを食べるのが一番!」

…いや、糖分摂取したいなら、飴でも舐めたら?

何だよ、その頭悪い理屈は。

「そんな訳で、私のポケットマネーで、チョコレートたっぷりティーパーティーを開催しようと思って」

「…あ、そ…」

まぁ、シルナのポケットマネーでやってることなら、好きにすれば良いのでは。

金の無駄遣いだなーとは思うけど。

「さぁさぁ、皆食べて食べて。遠慮しなくて良いからね。全部食べて良いよ!」

「だ、そうですよ天音さん」

「う、うん…。ちょっと…チョコの匂いで噎せそう…」

「『八千歳』、それ何?美味しい?」

「うん。なかなか行けるよ。いつもこっそり摘み食いしてるチョコよりおいしーかも」

「そっか。じゃあ僕ももらおうかな」

シルナの、突然のチョコレートティーパーティー宣言に。

天音とナジュ、令月とすぐりの四人は、さすがとも言うべき適応力の高さを見せつけていた。

お前ら…。シルナに付き合ってやるのは結構だが。

今の状況を分かってるか?

そりゃ息抜きも必要だとは思うけど。

結局、まだ何も解決していない訳で…。

こうしている間にも、また新たな童話シリーズの魔法道具が現れるかもしれなくて…。

…すると。

「それはそうですけど、でも現状、僕達に出来ることはないでしょう?」

「…ナジュ…」

俺の心を読んだナジュが、すかさずそう言った。
< 371 / 634 >

この作品をシェア

pagetop