神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
また、いつものパターンかよ。

「こちらからは何も出来ないんだから、こちらは堂々と、座して時を待てばよろしい」

「…お前は肝が据わってるな」

「伊達に何度も死んでませんからね」

そうでした。

…はぁ…分かったよ。

正直、ティーパーティーなんて気分じゃないが…。

悶々鬱々としてるよりは、例え虚勢でも、楽しく騒いでいた方が良いよな…。

だからって、チョコ菓子の暴飲暴食はどうかと思うけど…。

どうするんだよ、このでっかいケーキ…。巨人用か?

絶対食べ切れない…と思うが、余れば余ったで、シルナは生徒に配るからな…。

何だかんだ、大量に用意した菓子が余って捨てる、という事態にはならないのだ。

食べ物は大切にするタイプ。

ま、当たり前だがな。

「さささ、羽久もどーぞ。おっきく切ってあげたからね、好きなだけ食べて!」

「…どうも…」

大振りにカットされたチョコケーキを、シルナに手渡された。

でけーよ。

しかし、シルナの更に乗っているチョコケーキは、もっと大きかった。

…よくもまぁあんなに食べられるもんだ…。

太るぞ。

デブ学院長、再び。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がするけど、ケーキが美味しいから良いや…」

「そうか」

単純な奴だな、お前は。

…と、思いながらケーキを食べていたところに。

「失礼しますよ、学院長。今日の書類、」

「あ、イレースちゃんいらっしゃい!良いところに!」

学院に届いた郵便物を手に、イレースが学院長室にやって来たが。

イレースは、部屋の中の惨状(チョコまみれ)を見つめ。

「…失礼します」

開きかけた扉を閉じて、そのまま退室。

逃げた。イレースが逃げたぞ。

戦略的撤退だ。

そして、賢明な判断でもある。

しかし。

「ちょ、イレースちゃん!イレースちゃん待って!チョコケーキ、ケーキ食べてって!」

学院長室から出ていったイレースを、シルナが追いかけに行った。

…あーあ…。

…結局、シルナに追いかけられたイレースは、シルナのチョコレート攻撃から逃れることが出来ず。

渋々ながら、シルナ主催のチョコレートティーパーティーのお客様として、ご招待されたのだった。

ようこそ。

折角だ。教師陣全員揃ってチョコレートの生贄になろうぜ。

死なば諸共、って奴だな。

イレースは御免かもしれないが。
< 372 / 634 >

この作品をシェア

pagetop