神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…さて。

結局イレースも巻き込んで…いつものメンバーで、チョコティーパーティーが開催されていた。

全く呑気なもんだよなぁ…。

「あの、ご馳走様でした。じゃあ僕はこれで…」

抜け駆けとばかりに、ホットチョコレートを飲み干し、チョコケーキの皿を空にして、一番乗りで退室しようとした天音。

…だったが。

「おかわりあるよ天音君!おかわり!」

「え?いや、おかわりは別に…」

「はいっ、今度はチョコタルトをどうぞ。飲み物は、またホットチョコレートで良い?」

「…いえ、あの…」

「分かった。じゃあ私の秘蔵のチョコレートティーを淹れてくるから、ちょっと待っててね〜!」

「…」

…人の話を聞かない系学院長、シルナ。

諦めろ、天音。

どうやら、まだまだ解放してはくれないようだ。

今日はもう、一日逃げられないかもな…。

仕事しろよ、仕事。

「まぁ良いじゃないですか。たまには息抜きしても」

と、ナジュは言ったが。

お前は息抜きの方が多いだろ。

「何度も言ってるでしょう?いつ何が出てくるかびくびくしてるより、どんと構えていた方が良いと」

「そりゃそうだけどさ…。いつ、また童話シリーズが襲ってくるか分からないのに…」

「なるようにしかならない、って奴です。一つずつ処理していけば、いずれ全ての童話シリーズを制覇出来るのでは?」

考えたくない事態だが、このままだと本当にそうなりそうだな。

誰一人犠牲者を出さずにコンプ出来るなら、それが一番なんだが…。

如何せんあの童話シリーズ、子供の玩具とは思えないくらい殺傷能力が高くて…。

毎回毎回、出てくる度に命の危機を感じてるよ。

あれがもっと平和な魔法道具だったら、話は早かったんだけどな…。

…すると、そこに。

「はいっ、チョコレートティーお待たせ〜!」

危機感の欠片もないシルナが、にこにことティーポットとティーカップを持ってきた。

…全く。お前はもう少し、何か思うところはないのか?

…いや、むしろ…誰よりも思うところがあるからこそ、強がっているのかもしれないが。

「はい、天音君どーぞ」

「あ、ありがとうございます…」

「皆にもあるよ〜、はい」

俺、まだホットチョコレート残ってるのに、目の前に熱々のチョコレートティーを出された。

噎せ返るチョコレートの匂い。

口から出そう。

鼻の奥にチョコの匂いが染み付いて、取れなくなりそうだ…と。

溜め息をつきかけた、そのとき。

…俺は、あることに気がついた。

「…シルナ、お前そんなティーカップ持ってたっけ?」

「ほぇ?」

シルナが、見慣れないティーカップにチョコティーを注いでいた。

シルナ主催のお茶会には、これまで何度も参加したことがあるが。

そのティーカップは、見慣れない代物だ。

やけにメルヘンなデザインだが…。

そんなティーカップ持ってたっけ?なんか初めて見た気がするぞ。
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