神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
すると、シルナは。

「…本当だ。私、こんなティーカップ持ってたっけ?」

お前も気づいてなかったのか。

気づかずに、チョコティー淹れようとしてたのか?

もっと早く気付けよ。

「老眼ですね」

ポツリと呟くイレース。本当だな。

「何処から紛れ込んだんだろう?一つだけ…」

「来客用じゃないんですか?」

「いや、来客用のティーカップは、別の場所に置いてるはずなんだけど…」

「洗うときに、紛れ込んだだけなんじゃないか?」

ティーカップのデザインなんて、いちいち気にしないしな。

ただ、来客用のティーカップを普段遣いするには、いささか勿体ないと言うか…。

「それに…このデザイン、何処かで見たことがあるような…」

と、シルナは訝しみながらティーカップを見つめた。

見たことがあるって、それ…。

…そのときだった。



「…!?」

テーブルの周囲が、突如として青い光に包まれた。

「な、何だこれ!?」

何が起きようとしている?

まさか、また…。

「あ、あぁぁ!そうだ思い出した!」

シルナが大きな声をあげて、ポンと手を叩いた。

「何だよ!?」

「このティーカップ、『不思議の国のアリス』の…!」

…『不思議の国のアリス』?

…『不思議の国のアリス』っていうのは、まさか。

またしても、俺の中に嫌な予感が浮かんだ。

ここ最近、幾度となく体験している嫌な予感である。

そして、その予感が当たってるのだとしたら。

俺達はまたしても…。



…青い光が更に増し、俺達を包み込んだ。
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