神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「駄目か〜…。折角見つけたのに…」

「うん…。捕獲し損なった…」

すぐりと令月が、落胆したように言った。

あぁ、お前ら…。

…。

「…何でここにいるんだ?」

改めて、ちょっと冷静になった。

お前ら、何故ここにいる。

すると。

「深夜の巡回」

この野郎。いけしゃあしゃあと。

あれだけ夜間外出やめろと言ってるのに、全く言うことを聞く気配がない。

しかも。

「それと、幽霊を捕獲しようと思って」

「…」

捕獲、ってお前ら…。

幽霊を、猛獣か何かと勘違いしてないか?

捕獲してどうするんだよ。

「惜しかった…。あと少しだったのに…」

「全くだよ。何日も張り込んで、ようやく見つけたのに…」

何だって?

こいつら、連日幽霊捕獲の為に、深夜に校舎内を彷徨いてたのか?

俺達も、ここ最近は連日、パトロールの為に深夜の校舎に来ていたのに。

令月達の姿を見つけたのは、今夜が初めてだぞ?

「俺達も毎日パトロールしてたのに、全然会わなかったな」

「あぁ、うん。隠れてたから」

「羽久せんせー達に見つかったら、帰れって怒られると思ったからさー。姿を見つけても、敢えて避けてた」

お前らは、俺達を見つけてたのか。

見つけていながら、気配を消して隠れてやがったんだな。

全く、姿形も、それどころか微かな気配さえ感じなかった。

さすが、夜の闇の中においては、令月達に並ぶ者はない。

二人の方から姿を現さなかったら、多分ずっと気づかないままだった。

本物の幽霊より、令月達の方が余程幽霊っぽい。

…で、それはともかく。

「何だったんだ、今のは…?」

令月達への説教は、後回しだ。

それより、さっき俺達が見たのは、何だったんだ?

咄嗟に、魔法まで使いそうになったけど…。

もしかして、さっきの…何度も現れては消えた、あの黒い影が…。

「何って、今のが幽霊なんでしょ」

令月が、あっけらかんとして言った。

…やっぱり?

そうだったら嫌だな〜と思ってたけど…やっぱり、そうなのか。
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