神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
出来るだけ味を感じないように、一気にごくんと飲み干した。
ブルーハワイ味を期待したが、そんなことはなかった。
かといって、苦い訳でも酸っぱい訳でも、甘い訳でもなく。
毒々しい色をしている癖に、水のように無味無臭だった。
マーライオンの如く噴き出さなかったのは良かったが、色が色だけに、全く味がないと逆に不気味。
「…」
…飲んだけど。
それで?これを飲んだことで、何が変わるんだ?
「…飲んでおいて何だけど、これ、毒じゃないよな…?」
「原作の『不思議の国のアリス』に、毒なんて出てきたっけ…?」
「そんなの分かんないだろ。白雪姫が巨大りんごを投げつけてくる時代なんだぞ?」
『不思議の国のアリス』に毒が出てきても、何もおかしいことなんて…。
…と、思った瞬間。
「うわっ!?」
「えっ…!?」
俺とシルナの身体が、再び青い光に包まれた。
途端に、俺の手が、足が、みるみるうちに縮み始めた。
悲鳴をあげる暇もなかった。
ほんの数秒の間で、俺もシルナも、テントウムシほどのサイズに縮んでしまった。
そのとき、俺は思い出した。
そういえば、原作の『不思議の国のアリス』でも、そうだった。
「drink me」の小瓶を嚥下したら、縮んだり、逆に大きくなったりするんだっけ。
そして今、俺達も…原作再現とばかりに、テントウムシサイズに縮んでしまった。
さっきまで見下ろしていたはずのテーブルが、そびえ立つ巨塔に見える。
唯一の救いは、着ていた服も一緒に縮んでしまったことか。
服はそのままに、身体だけ縮んでしまったら。
招待状よりも先に、まず人としての尊厳を守る為に、衣服を探さなければならないところだった。
「う…嘘だろ…?」
俺は、思わず絶望の声を出したが。
「うわー…。分身魔法で、シルナ昆虫シリーズを作ったときの視点だ…!」
シルナは、意外と大丈夫そうだった。
成程。シルナは普段から、分身魔法で昆虫を作り出しては、学院の敷地内のパトロールに当てているからな。
昆虫視点で物を見るのに慣れてるから、あまり驚かないのかもしれない。
こんなところで、分身魔法が役に立つとはな。
昆虫目線に慣れてない俺にとっては、脅威でしかない。
こえーよ。何だこれ。
…そのとき、俺ははたと思いついた。
「まさか…この状態で招待状を探せってことか…?」
「…そうかも…」
それが、この…トランプの6…「ティーセットの世界」に課せられた試練なのか。
…悪夢でしかないぞ。
まだスタートラインに立ったばかりなのに、既に目の前が真っ暗になる思いだった。
ブルーハワイ味を期待したが、そんなことはなかった。
かといって、苦い訳でも酸っぱい訳でも、甘い訳でもなく。
毒々しい色をしている癖に、水のように無味無臭だった。
マーライオンの如く噴き出さなかったのは良かったが、色が色だけに、全く味がないと逆に不気味。
「…」
…飲んだけど。
それで?これを飲んだことで、何が変わるんだ?
「…飲んでおいて何だけど、これ、毒じゃないよな…?」
「原作の『不思議の国のアリス』に、毒なんて出てきたっけ…?」
「そんなの分かんないだろ。白雪姫が巨大りんごを投げつけてくる時代なんだぞ?」
『不思議の国のアリス』に毒が出てきても、何もおかしいことなんて…。
…と、思った瞬間。
「うわっ!?」
「えっ…!?」
俺とシルナの身体が、再び青い光に包まれた。
途端に、俺の手が、足が、みるみるうちに縮み始めた。
悲鳴をあげる暇もなかった。
ほんの数秒の間で、俺もシルナも、テントウムシほどのサイズに縮んでしまった。
そのとき、俺は思い出した。
そういえば、原作の『不思議の国のアリス』でも、そうだった。
「drink me」の小瓶を嚥下したら、縮んだり、逆に大きくなったりするんだっけ。
そして今、俺達も…原作再現とばかりに、テントウムシサイズに縮んでしまった。
さっきまで見下ろしていたはずのテーブルが、そびえ立つ巨塔に見える。
唯一の救いは、着ていた服も一緒に縮んでしまったことか。
服はそのままに、身体だけ縮んでしまったら。
招待状よりも先に、まず人としての尊厳を守る為に、衣服を探さなければならないところだった。
「う…嘘だろ…?」
俺は、思わず絶望の声を出したが。
「うわー…。分身魔法で、シルナ昆虫シリーズを作ったときの視点だ…!」
シルナは、意外と大丈夫そうだった。
成程。シルナは普段から、分身魔法で昆虫を作り出しては、学院の敷地内のパトロールに当てているからな。
昆虫視点で物を見るのに慣れてるから、あまり驚かないのかもしれない。
こんなところで、分身魔法が役に立つとはな。
昆虫目線に慣れてない俺にとっては、脅威でしかない。
こえーよ。何だこれ。
…そのとき、俺ははたと思いついた。
「まさか…この状態で招待状を探せってことか…?」
「…そうかも…」
それが、この…トランプの6…「ティーセットの世界」に課せられた試練なのか。
…悪夢でしかないぞ。
まだスタートラインに立ったばかりなのに、既に目の前が真っ暗になる思いだった。