神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「で、皆さんが見た幽霊って、どんな形だったんですか?」
「さっき、黒い影って言ってたけど…。黒い影の幽霊だったの?」
この場で、幽霊を目にしていないナジュと天音が尋ねた。
そうだな…。
「幽霊と言うと、髪の長い白い服を着た女が…。みたいなのが定番ですけど」
「そ、それは…漫画やドラマの話じゃないの?」
そもそも、ここは学校だからな。
出てくるとしても、制服を着た子供の霊じゃね?
いや、あの黒い影の正体が、子供だったかどうかは分からないんだけど。
「噂通り、黒い影の幽霊だったよ」
「ふーん…」
「黒い影…。何だかはっきりしないね」
全くだ。
人影だけじゃ、正体が分からないじゃないか。
「黒ですか…それが白だったら、オーブの可能性もあるんですけどね」
お、オーブ?
あぁ、心霊写真とかにありがちな、白いもやもやみたいな奴か?
あんな感じでは…なかったなぁ。
もっとリアルな…まるで生きているかのような影だった。
「えっと…それは、見間違いじゃないんだよね?本当に…いたの?」
天音が、不気味そうに尋ねた。
…そうだな。
見間違いだったら良かったんだけど…。
「俺だけじゃない。イレースも令月も、すぐりも見たんだぞ」
俺とイレースだけならともかく。
この中で、誰よりも夜目が利く元暗殺者組までもが、あの幽霊を目撃したのだ。
勘違いではない。
「認めたくはありませんが、確かに黒い影のようなものを目撃しました」
「うん、僕も見た」
「俺も見たよー。気持ち悪かったね」
イレースと令月、すぐりが言った。
俺も含めて四人が…あ、一応シルナも加えておくと、五人の人間が目撃した訳だから。
見間違いでした、では済まないだろう。
さすがにな。
「じゃあ、本当に…。…でも、学院に出てくる幽霊の正体に、心当たりはあるの?」
「…それなんだよ。疑問なのは」
幽霊の姿がもっとはっきり見えていれば、正体を突き止めることが出来たんだろうに。
俺達が見た幽霊は、ただの黒い人影でしかなかった。
シルエットだけじゃ、その正体は分からない。
「学院内で死んだ人間なんていないし…」
「強いて言うなら、『アメノミコト』の襲撃を受けたときに、『アメノミコト』の暗殺者とやり合いましたが」
イレースに言われてから、そういえばそうだったと思い出した。
学院で起きた殺傷事件と言ったら、唯一そのとき…『アメノミコト』の刺客達と戦ったときくらいか…。
じゃあ、『アメノミコト』の暗殺者が化けて出た…とか?
…今更?
『アメノミコト』の襲撃から、結構時間経ってるんだけど。
今更出てきてのか?
随分ラグがあったな。
それとも、何か言いたいことがあって出てきたのか?
しかし。
「それは有り得ないよ」
「何?」
令月が、きっぱりとそう言った。
「さっき、黒い影って言ってたけど…。黒い影の幽霊だったの?」
この場で、幽霊を目にしていないナジュと天音が尋ねた。
そうだな…。
「幽霊と言うと、髪の長い白い服を着た女が…。みたいなのが定番ですけど」
「そ、それは…漫画やドラマの話じゃないの?」
そもそも、ここは学校だからな。
出てくるとしても、制服を着た子供の霊じゃね?
いや、あの黒い影の正体が、子供だったかどうかは分からないんだけど。
「噂通り、黒い影の幽霊だったよ」
「ふーん…」
「黒い影…。何だかはっきりしないね」
全くだ。
人影だけじゃ、正体が分からないじゃないか。
「黒ですか…それが白だったら、オーブの可能性もあるんですけどね」
お、オーブ?
あぁ、心霊写真とかにありがちな、白いもやもやみたいな奴か?
あんな感じでは…なかったなぁ。
もっとリアルな…まるで生きているかのような影だった。
「えっと…それは、見間違いじゃないんだよね?本当に…いたの?」
天音が、不気味そうに尋ねた。
…そうだな。
見間違いだったら良かったんだけど…。
「俺だけじゃない。イレースも令月も、すぐりも見たんだぞ」
俺とイレースだけならともかく。
この中で、誰よりも夜目が利く元暗殺者組までもが、あの幽霊を目撃したのだ。
勘違いではない。
「認めたくはありませんが、確かに黒い影のようなものを目撃しました」
「うん、僕も見た」
「俺も見たよー。気持ち悪かったね」
イレースと令月、すぐりが言った。
俺も含めて四人が…あ、一応シルナも加えておくと、五人の人間が目撃した訳だから。
見間違いでした、では済まないだろう。
さすがにな。
「じゃあ、本当に…。…でも、学院に出てくる幽霊の正体に、心当たりはあるの?」
「…それなんだよ。疑問なのは」
幽霊の姿がもっとはっきり見えていれば、正体を突き止めることが出来たんだろうに。
俺達が見た幽霊は、ただの黒い人影でしかなかった。
シルエットだけじゃ、その正体は分からない。
「学院内で死んだ人間なんていないし…」
「強いて言うなら、『アメノミコト』の襲撃を受けたときに、『アメノミコト』の暗殺者とやり合いましたが」
イレースに言われてから、そういえばそうだったと思い出した。
学院で起きた殺傷事件と言ったら、唯一そのとき…『アメノミコト』の刺客達と戦ったときくらいか…。
じゃあ、『アメノミコト』の暗殺者が化けて出た…とか?
…今更?
『アメノミコト』の襲撃から、結構時間経ってるんだけど。
今更出てきてのか?
随分ラグがあったな。
それとも、何か言いたいことがあって出てきたのか?
しかし。
「それは有り得ないよ」
「何?」
令月が、きっぱりとそう言った。