神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
むかっ腹の立つ猫のことは、放っておくとして。
この雑然とした部屋。
…本当に、全部ゴミ箱に叩き込みたくなりますね。
何十というドレスがハンガーにかけられ、林のように並んでいる。
もしかしたら、3桁あるかもしれない。
更に、ドレスだけではなく。
靴の入った箱や、帽子。
果てはネックレスや指輪など、アクセサリーの類まで。
ここにある装身具だけで、ブティックを開けるんじゃないかと思うほど。
…しかも。
私は、服やアクセサリーの良し悪しなど分かりませんが…。
これは、かなり高級品なのでは?
それこそ、ルーデュニア聖王国の女王、フユリ・スイレン女王が身につけるような…。
このお高い衣装やアクセサリーの山は、一体誰のものなのか…。
甚だしく金の無駄遣いですね。
絶対、こんなに着ませんから。
十分の一くらいに減らしても、全然困らないと思います。
全く、あのパンダ学院長と言い、この部屋の持ち主と言い…。世の中、無駄が多過ぎる。
大体、こんな意味不明な世界に送られて、何処にあるか分からない招待状を探してこい、などと…。
もうこの時点で、時間の無駄遣いでしかない。
時間は有限であり、それゆえ黄金の価値があるものだと、子供の頃学ばなかったんでしょう。
…ちっ。
心の中で舌打ちしながら、何足にも及ぶ靴の箱を開けては、中を確認する。
しかし、招待状など影も形も見つからない。
…それほど甘くはない、という事なのだろう。
…ちっ。
舌打ち二回目。
それは舌打ちしたくもなる…。
突然、こんな意味不明な世界に送り込まれたら…。
…そのとき、私は小さなメモを見つけた。
「ん…?」
ドレスのポケットの中に、小さな紙片が入っている。
お店で買ったときのタグ…ではなさそうだ。
まさか、これが招待状?
なんとも味気のない招待状だが…。
私は紙片を引っ張り出し、折りたたまれたそれを開いてみた。
それは、招待状ではなかった。
ただ一言、赤い鉛筆でこう書いてあった。
「help me」と。
「help me」…助けろって意味ですね。
そういえば、ここに来る前…あのデブのハンプティ・ダンプティが言っていた。
書いてあることには従え、と。
何のことだと思っていたが…まさか、これのこと…?
助けろって…一体何を?誰を?
そのとき。
ガチャッ、と衣装部屋の扉が開いた。
「あぁ、どうしましょう。どうしましょう」
派手な、ハート模様の赤い色のドレスに身を包み。
ドレスとお揃いの、赤いミュールを履いて。
キラキラと光る、黄金のティアラを頭に乗せた女性。
…何処からどう見ても、その姿は。
『不思議の国のアリス』に出てくる登場人物。
そう、私が引いたトランプの絵柄にもなっていた…ハートの女王、そのものだった。
…いきなり、真打ち登場、といったところでしょうか?
良いですよ、別に。受けて立ちます。
女王だろうが何だろうが…私の敵として立ち塞がるなら、排除するまで。
私はいつでも応戦出来るよう、片手に杖を握り締めた。
この雑然とした部屋。
…本当に、全部ゴミ箱に叩き込みたくなりますね。
何十というドレスがハンガーにかけられ、林のように並んでいる。
もしかしたら、3桁あるかもしれない。
更に、ドレスだけではなく。
靴の入った箱や、帽子。
果てはネックレスや指輪など、アクセサリーの類まで。
ここにある装身具だけで、ブティックを開けるんじゃないかと思うほど。
…しかも。
私は、服やアクセサリーの良し悪しなど分かりませんが…。
これは、かなり高級品なのでは?
それこそ、ルーデュニア聖王国の女王、フユリ・スイレン女王が身につけるような…。
このお高い衣装やアクセサリーの山は、一体誰のものなのか…。
甚だしく金の無駄遣いですね。
絶対、こんなに着ませんから。
十分の一くらいに減らしても、全然困らないと思います。
全く、あのパンダ学院長と言い、この部屋の持ち主と言い…。世の中、無駄が多過ぎる。
大体、こんな意味不明な世界に送られて、何処にあるか分からない招待状を探してこい、などと…。
もうこの時点で、時間の無駄遣いでしかない。
時間は有限であり、それゆえ黄金の価値があるものだと、子供の頃学ばなかったんでしょう。
…ちっ。
心の中で舌打ちしながら、何足にも及ぶ靴の箱を開けては、中を確認する。
しかし、招待状など影も形も見つからない。
…それほど甘くはない、という事なのだろう。
…ちっ。
舌打ち二回目。
それは舌打ちしたくもなる…。
突然、こんな意味不明な世界に送り込まれたら…。
…そのとき、私は小さなメモを見つけた。
「ん…?」
ドレスのポケットの中に、小さな紙片が入っている。
お店で買ったときのタグ…ではなさそうだ。
まさか、これが招待状?
なんとも味気のない招待状だが…。
私は紙片を引っ張り出し、折りたたまれたそれを開いてみた。
それは、招待状ではなかった。
ただ一言、赤い鉛筆でこう書いてあった。
「help me」と。
「help me」…助けろって意味ですね。
そういえば、ここに来る前…あのデブのハンプティ・ダンプティが言っていた。
書いてあることには従え、と。
何のことだと思っていたが…まさか、これのこと…?
助けろって…一体何を?誰を?
そのとき。
ガチャッ、と衣装部屋の扉が開いた。
「あぁ、どうしましょう。どうしましょう」
派手な、ハート模様の赤い色のドレスに身を包み。
ドレスとお揃いの、赤いミュールを履いて。
キラキラと光る、黄金のティアラを頭に乗せた女性。
…何処からどう見ても、その姿は。
『不思議の国のアリス』に出てくる登場人物。
そう、私が引いたトランプの絵柄にもなっていた…ハートの女王、そのものだった。
…いきなり、真打ち登場、といったところでしょうか?
良いですよ、別に。受けて立ちます。
女王だろうが何だろうが…私の敵として立ち塞がるなら、排除するまで。
私はいつでも応戦出来るよう、片手に杖を握り締めた。