神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「あなたには本当に…感謝しかありません」

国の危機を、無事に乗り越えたその後。

…お待ちかねの時間がやってきました。
 
「本当に、ありがとうございました…あなたのお陰で、私は大切なことをあなたに教えられ、更に、ハートの国は危機を乗り越え…」

「…そんなことはどうでも良いんです」

感謝をされる謂れはない。

ハートの女王を助け、国を守ったのは、決して親切心からではない。

私には私の目的がある。

「それよりも、約束のモノは…」

「えぇ、勿論…用意しています。あなたが求めているのは、こちらでしょう?」

…そう言って。

ハートの女王は、青い封筒の招待状を差し出した。

…そう、これです。

私はこれの為に、非生産的な女王の愚痴と相談に付き合ったのです。

ちゃんと見返りはもらわなくては。

「アリスに頼んで、用意してもらいました。お茶会の招待状です」

「ありがとうございます」

確かに受け取りました。

…これで、目的は達成されましたね。

「本当なら…あなたには、もう少し私のもとで…相談役になって欲しかったのですけど…」

「それは遠慮します」

「…そう仰ると思いました」

冗談じゃありませんよ。

招待状を手に入れた今、これ以上付き合う義理はない。

さっさと帰りたいものだ。

「それでは、どうかお気をつけて。機会があればまた会いましょう」

…女王には悪いですが、もう、二度とあなたに会う機会など、あって欲しくないものですね。

…ともあれ、招待状は手に入れた。

私のやるべきことは、これでおしまい。

あとは、仲間達の集結を待ち、そして…。





…アリスのお茶会とやらに、参加するだけです。


私の周囲が、青い光に包まれた。








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