神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…白ウサギさんが言う『殺戮の堕天使』と、僕の知っている『殺戮の堕天使』が同一人物なのかは、分からない。

白ウサギさんも言ってたけど、本当に同一人物なのか、確認した訳じゃないんだから。
 
…分からないなら、確認すれば良い。 

「…あの、白ウサギさん」

「?私に何か?」

「白ウサギさん達は、『殺戮の堕天使』を追って旅をしてるんだよね?」

「えぇ…。奴が現れた場所に赴いて、村人達を治療して回っています」 

そっか。

「良かったら…僕も、白ウサギさん達に同行させてもらえないかな?」

「え…」

僕は確かめなければならない。

この世界で暗躍する『殺戮の堕天使』が、本当に僕の知る人物なのか。

そして、空に描かれていた文字…「forgive me」の意味を。

…招待状探しに、制限時間があることは分かっている。

でも、それでも…僕はどうしても、確かめずにはいられなかった。

願わくば僕のこの行動が、招待状に繋がることを信じて。

「きっと役に立ってみせる。『殺戮の堕天使』のことも…」

「…どうやら、訳アリのようですね」

「…うん、そうかも」

「分かりました。人手は、いくらあっても困りません。あなたがその気なら、私達に同行してください」

…良かった。

この世界にいる『殺戮の堕天使』のことも。

三月ウサギのことも。

全てを解き明かす旅が、ここに始まろうとしていた。
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