神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「気持ちは分かる。でも、焦らないで。よく考えて…!僕達が束になって、本当にナジュく…いや、『殺戮の堕天使』を倒せるの?」

この世界で言うところの『殺戮の堕天使』が、本当に…僕の知るナジュ君なのかは分からない。

分からないけど、もしこの世界の『殺戮の堕天使』が、オリジナルであるナジュ君に倣った存在なら。

僕達では、束になったって彼に勝つことは出来ない。

ましてや、ろくに武装もしていないウサギさん集団では、とても…。

…しかし。

「何を弱気な…!これ以上の犠牲が出ても良いと言うのか?」

「そ、そんなことは…」

犠牲が出ても良いとは言っていない。

ただ、冷静に判断する必要があると言っているだけだ。

「こちらが不利なことは分かってる。でも、誰かが止めなければ、一生このまま変わらないんだ」

「そうだ。例え差し違えてでも…誰かが『殺戮の堕天使』を止めるべきだ」

「やられっぱなしになってたまるか…!殺された人々の無念を晴らすんだ!」

…駄目だ。

僕がいくら言葉で止めようとしても…聞く耳を持ってくれない。

頭に血が上っているのだろう。

悔しいのは分かるけど…でも…。

「急ぎ、『殺戮の堕天使』の居場所を探ろう。次に奴が虐殺を始める前に…僕達で、奴を止めるんだ!」

「おぉー!」

…駄目か。

僕の説得では、最早止められそうもなかった。

『殺戮の堕天使』捜索には、少なからず時間がかかるだろう。

それまでに彼らが頭を冷やし、考え直してくれることを願うしかなかった。
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