神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
そのとき、僕は分かった。
理解した。
この世界が何なのか。何の為に存在しているのか。
この世界で、僕は何をするべきなのか…その全てを理解した。
「腰抜けですか、あなたは。仲間を殺されたのに、復讐の一つもしないなんて」
「…」
「あなたも僕と同じ。人の心を持たない、冷たい…、」
「大丈夫だよ。…僕は、君を許してあげる」
「…え?」
最初にこの世界に来たとき。
空に書かれていた、「forgive me」の文字。
あの意味が、ようやく分かったよ。
僕が許すべき相手は、君だったんだね。
ハンプティ・ダンプティに「書いてあることには従え」と言われたからではない。
僕は僕の意志で、三月ウサギを許す。
…元の世界で、僕が「彼」にそうしたように。
他の誰が許さずとも、僕だけは…君を許す存在になる。
「何か理由があるんだよね。『彼』もそうだった…。君には君なりに、こうせざるを得ない理由があるんだよね」
「…それは…」
「分かってるよ。君が心からの悪人じゃないってこと」
そう、僕は知っている。
君が悪人じゃないってこと。
本当は誰より繊細で、傷つきやすい人だってこと。
人を殺す度に痛む心の傷に…気づいていながら、気づかない振りをしていたこと。
他人の悲鳴を聞きながら、同じくらい自分も悲鳴をあげていたこと。
…他人の血を浴びながら、同じくらい自分も血を流していたこと。
本当は誰よりも…殺される人よりも…誰かの助けを求めていたんだってことも。
僕は知ってる。
…だって僕は、君の親友だから。
だから僕は、君を許す。
「大丈夫だよ。僕は君の味方だから…。僕が、君を許すから…だから、怖がらなくて大丈夫」
「…」
「誰が許さなかったとしても…僕は、君の罪を許すよ。…君を、一人ぼっちにはしないよ」
…本当の君は、凄く寂しがりやだってことを知ってるからね。
…三月ウサギさんの左目から、一筋の水滴が零れ落ちた、そのとき。
「…え?」
ぱしゅんっ、と音を立てて、三月ウサギさんの姿が消えてなくなった。
理解した。
この世界が何なのか。何の為に存在しているのか。
この世界で、僕は何をするべきなのか…その全てを理解した。
「腰抜けですか、あなたは。仲間を殺されたのに、復讐の一つもしないなんて」
「…」
「あなたも僕と同じ。人の心を持たない、冷たい…、」
「大丈夫だよ。…僕は、君を許してあげる」
「…え?」
最初にこの世界に来たとき。
空に書かれていた、「forgive me」の文字。
あの意味が、ようやく分かったよ。
僕が許すべき相手は、君だったんだね。
ハンプティ・ダンプティに「書いてあることには従え」と言われたからではない。
僕は僕の意志で、三月ウサギを許す。
…元の世界で、僕が「彼」にそうしたように。
他の誰が許さずとも、僕だけは…君を許す存在になる。
「何か理由があるんだよね。『彼』もそうだった…。君には君なりに、こうせざるを得ない理由があるんだよね」
「…それは…」
「分かってるよ。君が心からの悪人じゃないってこと」
そう、僕は知っている。
君が悪人じゃないってこと。
本当は誰より繊細で、傷つきやすい人だってこと。
人を殺す度に痛む心の傷に…気づいていながら、気づかない振りをしていたこと。
他人の悲鳴を聞きながら、同じくらい自分も悲鳴をあげていたこと。
…他人の血を浴びながら、同じくらい自分も血を流していたこと。
本当は誰よりも…殺される人よりも…誰かの助けを求めていたんだってことも。
僕は知ってる。
…だって僕は、君の親友だから。
だから僕は、君を許す。
「大丈夫だよ。僕は君の味方だから…。僕が、君を許すから…だから、怖がらなくて大丈夫」
「…」
「誰が許さなかったとしても…僕は、君の罪を許すよ。…君を、一人ぼっちにはしないよ」
…本当の君は、凄く寂しがりやだってことを知ってるからね。
…三月ウサギさんの左目から、一筋の水滴が零れ落ちた、そのとき。
「…え?」
ぱしゅんっ、と音を立てて、三月ウサギさんの姿が消えてなくなった。