神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
ナジュの身体のはずなのに、ナジュじゃない。
なら、答えは一つだけ。
ナジュの身体の中にいる、魂だけの存在。
…『冥界の女王』と呼ばれる魔物であり、そしてナジュにとって最も大事な人物。
…そう、リリスである。
やはりあれは…リリスの力なのか。
あの変異した魔力も、身体も、リリスの力なのだ。
…理屈は、理解した。
でも…。
「何でナジュが…魔物の…リリスの力を使えるんだ?」
魔物と人間は、当然ながら違う種族。
吐月のような召喚魔導師は、血と魔力を対価に、魔物に力を貸してもらうことが出来る。
でも…今のナジュは、通常の魔物との契約を交わしている状態ではないはずだ。
同じ身体に同居しているとはいえ、ナジュがリリスの力を勝手に使うことは出来ないはず。
不死身の身体は、リリスの力というよりは…そういう体質、と言った方が正しいし…。
これまでだって、幾度となくピンチに陥ったことはあるが。
ナジュにこんな…奥の手があるなんて、聞いたことも見たこともない。
ましてや、こんな…まるで獣のような姿。
普段のナジュからは、想像もつかない。
「使ってると言うか…無理矢理引き出してるんだろうね。リリスちゃんの力を…」
「そんなことが出来るのか…?」
「私も…さすがに、魔物と融合した人間はナジュ君が初めてだから…確かなことは言えないけど…」
だろうな。
魔物と契約することはあっても、人間と魔物が融合するなんて、前代未聞だ。
ましてや、リリスのように強力な力を持つ魔物が…。
「元々ナジュ君とリリスちゃんの融合は、魔物としても人間としても『中途半端』な状態だったんだと思う」
「…『中途半端』…」
「どっちつかず、と言っても良いね」
人間ではない、しかし魔物でもない…ってところか?
まぁ、そうだよな。
リリスの特性、体質である不死身の身体を継承していながら。
片や、ナジュ本来の特技である、読心魔法を使いまくっていたりするもんな。
良く言えば、人間であるナジュの長所と、魔物であるリリスの長所をかけ合わせたハイブリッド。
悪く言えば、人間としても魔物としてもどっちつかずな半端者。
そんな…不安定な状態だった。
だからこそ、このような芸当が出来る。
人の身でありながら…魔物の力を直接身体に宿し、行使するなどという…離れ業が。
…そんなことが出来たなんて…。
「…なんて強さだ…。信じられない」
リリスの力を纏ったナジュは、巨大アリスに猛攻を仕掛けていた。
長い爪を引っ掛けるようにして、アリスのワンピースを掴んで投げ飛ばした。
「あっぶな…!」
アリスの巨体が、お茶会のテーブルにめり込んだ。
すんでのところで、皿の上に乗っていた、いちごソースまみれのシルナを救出。
危うく、アリスの巨体に押し潰されるところだった。
ナジュ、お前…戦ってくれているのは有り難いが。
「俺達を潰さないように、ちょっと気をつけ…」
「…ふーっ…ふーっ…」
「…?」
半ば変身している状態なのだから、ナジュの様子が普段と違うのは当然だが。
それを差し引いても、ナジュは普通ではなくなっていた。
なら、答えは一つだけ。
ナジュの身体の中にいる、魂だけの存在。
…『冥界の女王』と呼ばれる魔物であり、そしてナジュにとって最も大事な人物。
…そう、リリスである。
やはりあれは…リリスの力なのか。
あの変異した魔力も、身体も、リリスの力なのだ。
…理屈は、理解した。
でも…。
「何でナジュが…魔物の…リリスの力を使えるんだ?」
魔物と人間は、当然ながら違う種族。
吐月のような召喚魔導師は、血と魔力を対価に、魔物に力を貸してもらうことが出来る。
でも…今のナジュは、通常の魔物との契約を交わしている状態ではないはずだ。
同じ身体に同居しているとはいえ、ナジュがリリスの力を勝手に使うことは出来ないはず。
不死身の身体は、リリスの力というよりは…そういう体質、と言った方が正しいし…。
これまでだって、幾度となくピンチに陥ったことはあるが。
ナジュにこんな…奥の手があるなんて、聞いたことも見たこともない。
ましてや、こんな…まるで獣のような姿。
普段のナジュからは、想像もつかない。
「使ってると言うか…無理矢理引き出してるんだろうね。リリスちゃんの力を…」
「そんなことが出来るのか…?」
「私も…さすがに、魔物と融合した人間はナジュ君が初めてだから…確かなことは言えないけど…」
だろうな。
魔物と契約することはあっても、人間と魔物が融合するなんて、前代未聞だ。
ましてや、リリスのように強力な力を持つ魔物が…。
「元々ナジュ君とリリスちゃんの融合は、魔物としても人間としても『中途半端』な状態だったんだと思う」
「…『中途半端』…」
「どっちつかず、と言っても良いね」
人間ではない、しかし魔物でもない…ってところか?
まぁ、そうだよな。
リリスの特性、体質である不死身の身体を継承していながら。
片や、ナジュ本来の特技である、読心魔法を使いまくっていたりするもんな。
良く言えば、人間であるナジュの長所と、魔物であるリリスの長所をかけ合わせたハイブリッド。
悪く言えば、人間としても魔物としてもどっちつかずな半端者。
そんな…不安定な状態だった。
だからこそ、このような芸当が出来る。
人の身でありながら…魔物の力を直接身体に宿し、行使するなどという…離れ業が。
…そんなことが出来たなんて…。
「…なんて強さだ…。信じられない」
リリスの力を纏ったナジュは、巨大アリスに猛攻を仕掛けていた。
長い爪を引っ掛けるようにして、アリスのワンピースを掴んで投げ飛ばした。
「あっぶな…!」
アリスの巨体が、お茶会のテーブルにめり込んだ。
すんでのところで、皿の上に乗っていた、いちごソースまみれのシルナを救出。
危うく、アリスの巨体に押し潰されるところだった。
ナジュ、お前…戦ってくれているのは有り難いが。
「俺達を潰さないように、ちょっと気をつけ…」
「…ふーっ…ふーっ…」
「…?」
半ば変身している状態なのだから、ナジュの様子が普段と違うのは当然だが。
それを差し引いても、ナジュは普通ではなくなっていた。