神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…勝負…。
…ついた、のか?
「あ…。アリスが…」
地面に倒れたアリスは、そのまま青い光の粒になり…宙に消えていった。
俺達をにやにや顔で見下ろしていたチェシャ猫の姿も、いつの間にか消えてなくなっていた。
すると、途端に。
俺達もまた、青い光に包まれた。
何事かと身構えたが、何のことはない。
凶気に満ちた「お茶会」が終わり、元の世界に返されたのだ。
気がつくと俺達は、見慣れた場所に…。
イーニシュフェルト魔導学院の学院長室に…戻ってきていた。
…早く戻ることを切望していたのに、いざ戻ってきてみると…これは本当に現実なのか、疑いたくなるな。
…終わった…のか?
俺達は誰一人欠けることなく、全員揃って元の世界に戻ってこられたのだ。
童話シリーズの魔法道具、『不思議の国のアリス』を攻略したのだ。
無事に戻ってこられて、よかっ…。
…た、じゃない。
「ナジュ、お前大丈夫か…!?」
俺は真っ先に、ナジュに駆け寄った。
天音も同様だった。
天音だって怪我をしているはずなのに、そんなことは二の次だった。
ナジュは床に蹲って、全身から血を噴き出しながら、肩で息をしていた。
ちょ…お前、これ。
不味いんじゃないのか…!?どう見ても…!
「ナジュ、お前ナジュか…!?話通じるか?」
「ギャオォォォ」とか叫んで、勢い余って襲ってきたらどうしよう。
ある意味、アリスより恐ろしいぞ。
…しかし、その心配は必要なかった。
「な…。ナジュ、ですよ…」
言葉を詰まらせながらも、ちゃんとナジュが返事をした。
良かった。ナジュの意識はあるんだな。
獣のように変化(へんげ)していたナジュの身体が、じわじわと元に戻っていった。
「お前、今の…変身は…」
「あぁ…。あれは…まぁ、僕の…奥の手、という奴で…」
途切れ途切れになりながらも、ナジュはそう返事をした。
奥の手…。まさに奥の手だったな。
そして、諸刃の剣でもある。
「リリスの…力を、無理矢理…人の身体で引き出して…使うんです。一時的、ですけど…」
やはり、そういうことだったか。
シルナの読み通りだったな。
「でも…それで何で、そんなことになるんだよ…!?」
「…それは…。…元々、人の身で魔物の魔力を扱うのは…無理、が、あるので…」
その無理を、お前は無理矢理通したっていうのか?
「…げほっ…」
ナジュは苦しそうに胸を押さえ、血の塊を吐き出した。
…おいおい、冗談だろ。
「…!ナジュ、しっかりしろ…」
「…平気、ですよ」
何が平気なんだよ。
この姿を見て、何が平気なんだ?
「昔、一度だけ…やったこと、あるんです。これ…」
「え…」
「そのとき、も…同じような、ことに…。だから…大丈夫、です」
同じようなこと、って…。
今みたいに、変身した「反動」で、死にかけたことがあるのか?
「脆弱な、人の、体が…リリスの魔力に…耐えられなくて…」
「…」
「普通の人間なら、普通に…死んでるところなんですが、如何せん、僕は死なない、ので…」
「…」
「身体が…これ、『副作用』で…何回も…心臓が破裂してるん、ですが…。その度再生して…また破裂して…再生して…を、しばらく、くりかえ…」
「…もう、良い。喋るな」
聞いてるだけで…気分が悪くなりそうだった。
…ついた、のか?
「あ…。アリスが…」
地面に倒れたアリスは、そのまま青い光の粒になり…宙に消えていった。
俺達をにやにや顔で見下ろしていたチェシャ猫の姿も、いつの間にか消えてなくなっていた。
すると、途端に。
俺達もまた、青い光に包まれた。
何事かと身構えたが、何のことはない。
凶気に満ちた「お茶会」が終わり、元の世界に返されたのだ。
気がつくと俺達は、見慣れた場所に…。
イーニシュフェルト魔導学院の学院長室に…戻ってきていた。
…早く戻ることを切望していたのに、いざ戻ってきてみると…これは本当に現実なのか、疑いたくなるな。
…終わった…のか?
俺達は誰一人欠けることなく、全員揃って元の世界に戻ってこられたのだ。
童話シリーズの魔法道具、『不思議の国のアリス』を攻略したのだ。
無事に戻ってこられて、よかっ…。
…た、じゃない。
「ナジュ、お前大丈夫か…!?」
俺は真っ先に、ナジュに駆け寄った。
天音も同様だった。
天音だって怪我をしているはずなのに、そんなことは二の次だった。
ナジュは床に蹲って、全身から血を噴き出しながら、肩で息をしていた。
ちょ…お前、これ。
不味いんじゃないのか…!?どう見ても…!
「ナジュ、お前ナジュか…!?話通じるか?」
「ギャオォォォ」とか叫んで、勢い余って襲ってきたらどうしよう。
ある意味、アリスより恐ろしいぞ。
…しかし、その心配は必要なかった。
「な…。ナジュ、ですよ…」
言葉を詰まらせながらも、ちゃんとナジュが返事をした。
良かった。ナジュの意識はあるんだな。
獣のように変化(へんげ)していたナジュの身体が、じわじわと元に戻っていった。
「お前、今の…変身は…」
「あぁ…。あれは…まぁ、僕の…奥の手、という奴で…」
途切れ途切れになりながらも、ナジュはそう返事をした。
奥の手…。まさに奥の手だったな。
そして、諸刃の剣でもある。
「リリスの…力を、無理矢理…人の身体で引き出して…使うんです。一時的、ですけど…」
やはり、そういうことだったか。
シルナの読み通りだったな。
「でも…それで何で、そんなことになるんだよ…!?」
「…それは…。…元々、人の身で魔物の魔力を扱うのは…無理、が、あるので…」
その無理を、お前は無理矢理通したっていうのか?
「…げほっ…」
ナジュは苦しそうに胸を押さえ、血の塊を吐き出した。
…おいおい、冗談だろ。
「…!ナジュ、しっかりしろ…」
「…平気、ですよ」
何が平気なんだよ。
この姿を見て、何が平気なんだ?
「昔、一度だけ…やったこと、あるんです。これ…」
「え…」
「そのとき、も…同じような、ことに…。だから…大丈夫、です」
同じようなこと、って…。
今みたいに、変身した「反動」で、死にかけたことがあるのか?
「脆弱な、人の、体が…リリスの魔力に…耐えられなくて…」
「…」
「普通の人間なら、普通に…死んでるところなんですが、如何せん、僕は死なない、ので…」
「…」
「身体が…これ、『副作用』で…何回も…心臓が破裂してるん、ですが…。その度再生して…また破裂して…再生して…を、しばらく、くりかえ…」
「…もう、良い。喋るな」
聞いてるだけで…気分が悪くなりそうだった。