神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「…」

「…」

「…」

一同、しばし無言で顔を見合わせ。

死体の倒し方について考える。

「…完膚なきまでに叩き潰して、跡形も残さず塵にしてしまえば、操る死体ごと消し去れるでしょう」

真っ先に意見したのは、イレースだった。

まぁ、お前はそう言うと思ってたよ。

思慮深いように見えて、実は脳筋なんだよな。イレースって。

本人に言ったらしばかれるから、言わないけど。

「えぇっと…塩とか撒いたら良いんじゃないかな…?」

と、これは天音の意見。

「あとは、御札を貼るとか…」

「それは幽霊の倒し方なのでは?幽霊とゾンビ混同してますよ」

「えっ」

確かに、似たようなカテゴリーであることは否めない。

が、実体のない幽霊とは違って、ゾンビは触れられる肉体を持ってるからな。

塩を撒いても、効かない可能性大。

御札も無理なんじゃないかな…。

別に、この世に未練を残して現れた訳じゃなくて…。何者かの意志によって、操られてるだけなんだし…。

「じゃあ…ナジュ君は、どうやって倒したら良いと思う?」

「やはりゾンビと言えば、頭部の破壊ですよ。これが一番確実でしょう」

そうなんだ。

何でも頭を潰してしまえば、動かなくなるだろうと。

「リーチの長い鈍器がおすすめですよ」

ふーん。

「リーチの長い…。…それ知ってる。バールのようなもの、って奴でしょ?」

「成程ねー。じゃ、園芸部から鍬(クワ)を借りてきて、それで頭をぶん殴ろう」

元暗殺者組、過激。

お前らなら、何の躊躇もなくやりそうだな。

「えぇと…。それで倒せるの?」

「一体一体は無効化出来るでしょうが、数で圧倒されると面倒ですね」

だよな。

ここにいるのは頼もしい仲間ばかりだが、しかし、数としてはたったの七人だ。

おまけに、ここはイーニシュフェルト魔導学院。

多くの無関係な生徒達がいるのだ。生徒達を守らなければならない。

その状況で、無限ゾンビ軍団に襲いかかられたら…。

…うん、恐ろしいことになりそうだ。

笑えないぞ。

「ゾンビを撃退する、何かこう…画期的な方法はないもんか…」

やっぱりイレースの言う通り、丸焼きにするしかないのか?

…と、思ったが。

「…私の推測が正しければ」

シルナが、おもむろに口を開いた。

「何?」

「私の推測が正しければ…恐らく、ゾンビの軍隊と戦うことにはならないと思うよ」

「…そうなのか?」

それは…願ったり叶ったりだ。

誰も好き好んで、ゾンビとバトルしたくはない。

「いくら数が多かったとしても…そうだな。20人を下回るんじゃないかな」

20人か。

…それはそれで多くね?

でも、20人なら…ゾンビ軍襲来、なんていう笑えない事態は回避出来そうだ。

不幸中の幸いだな。

20人くらいなら、順番に脳天を叩き割って制圧…出来るか?

出来なくても、やるしかないのだが…。

俄然、何とかなりそうな気がしてきた。

「でも、イーニシュフェルトの里の賢者が20人で攻めてくると思ったら、結構キツいですよね」

という、ナジュの一言で。

やっぱり、どうにも出来なさそうな気分になってきた。

確かにそう思うと…無理ゲーにも程があるな。
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