神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
で、結局この力の正体は何なのか。

村を出たときの僕は、まだ幼くて、自分の力の正体なんて知らなかった。

知ろうともしなかった。どうでも良かったから。

あるのは事実だけだ。自分は死者の身体を操れるという、紛れもない事実。

それ以上に大切なことなんてなかった。

だから当分の間、僕は自分の力の正体を知らずに生きてきた。

でも、年齢を重ねるに従って…段々と僕は、この力が何なのか気になってきた。

まぁ、当然と言えば当然か。

僕は村を出てからというもの、何の目的もなく、ただ毎日生きる為だけに生きていた。

暇を持て余した僕は、特に意味なく近隣の村々を襲ったり、道行く旅人を脅かしたり、色々やっていたのだが。

その度に、僕の類まれな力を見て、人々は僕を恐れた。

まるで、僕が人外生物であるかのような目で見るのだ。

僕にとってこの力は、生まれながらに持っていた力で、当たり前のように使うことが出来るけれど。

他の人にとっては、そうじゃない。

だからこそ父も、村人達も、僕の力を恐れて僕を焼き殺そうとしたのだ。

どうやら僕のこの力は、特別なものであるらしい。

そのことに気づいた僕は、この力の正体を知りたいと、初めてそう思った。

それを知れば、身体に刻まれた火傷の意味が分かるだろうから。

そして、僕が自分の力について知りたいと思った理由はもう一つある。

成長しなかったからだ。

どういう意味かと聞かれたら、その通りの意味だと答えるしかない。

僕は成長しなかった。

何年経っても、僕の身体は幼い子供のままなのだ。

いや、厳密に言えば…村から出てしばらくの頃は、一応ちゃんと成長していた。

ただしその成長は、物凄くゆっくりだった。

普通の子供なら、生まれてから10年も経てば、今の僕と同じくらいの背丈に成長するだろう。

でも、僕が今の背丈までに成長するには、村を出て500年以上が経過してからだった。

しかも、それ以降は何年経とうと、全く成長しなかった。

ぱたりと時間が止まってしまったかのように、僕の身体はそれ以上の成長をやめた。

だから今でも…生まれてから3000年以上経った今でも、僕の身体は10歳かそこらの子供のまま。

成長しない身体も、この力と何か関係があるのかもしれないと思った。

何もかも、推測するしかなかった。

死者は僕の思い通りに動いてくれるけど、知恵を授けてくれる訳ではなかったから。

僕が自分で調べて、理解するしかなかった。

僕は時間をかけて、この身体に宿る力について…あらゆる手段を用いて調べ尽くした。
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