神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
――――――…シルナの言った通りだったな。

ネクロマンサーは、遠くから死体を操ることは出来ない。

死体を動かすときは、その死体から100メートルか、200メートル圏内の何処かに潜んでいる。

だから死体を見つけたら、死体の周りを徹底的に探せば良い。

必ず、何処かに操者が隠れているはずだから。

そして、シルナの言う通り…俺達はようやく、死体を動かしている操者…ネクロマンサーを見つけた。

グラウンドのほとりに植えてある桜の木の上で、木陰に紛れ込むようにして潜んでいた。

死体の近くにいると分かっているのなら、話は早い。

人探しについては覚えのある令月とすぐりが、率先して捜索してくれた。

そして案の定、1分足らずで見つけた。

まぁ、隠れる場所があまりにも安直だったから、そのせいかもしれないけど。

ネクロマンサーを見つけるなり、令月は小太刀で桜の木の枝を一刀両断。

枝の上に陣取っていたネクロマンサーは、真っ逆さまに地面に落下した。

見つけてくれたのは有り難いんだけど、桜の木を切るんじゃない。

とはいえ、お陰で逃げられずに済む。

令月の動きは素早かった。

地面に落っこちたネクロマンサーを、令月は懐から取り出した麻縄で、ぐるぐる巻きにした。

あまりにも鮮やかな手付き。さすが元暗殺者である。

令月に見つかったのが運の尽き、って奴だな。

ぐるぐる巻きにされたネクロマンサーは、さながら芋虫状態だった。

「ふぅ。捕獲完了」

「…お疲れ」

一仕事終えたみたいな顔で、パンパンと手を払う令月をねぎらい。

改めて、俺は芋虫状態となったネクロマンサーを見下ろした。

…その、あまりの滑稽な姿に。

笑っちゃいけないんだろうけど、ちょっと笑ってしまいそうになった。

笑い事じゃないんだぞ。
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