神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…さて、捕獲も完了したことだし。

「おーい!見つけたぞ」

「あ、いた?」

「やっと見つけましたか」

俺や令月と同じく、ネクロマンサーを探していた他の教員達を呼んだ。

シルナ、イレース、ナジュ、天音、そしてすぐりである。

そこに俺と令月と合わせて、まぁイツメンだな。

皆で、捕らえたネクロマンサーを見下ろした。

「…この人が…」

思わず、シルナはそう呟いた。

そう。この人が。

この芋虫が、俺達を悩ませていたネクロマンサーの正体なのだ。

「何でこれ、こんな芋虫みたいになってるんですか?」

「え?だって縛っておかないと、逃げるかと思って」

ナジュの問いに、令月が答えた。

まぁそうなんだけどさ。

こんな…全身縛り付ける必要はなかったのでは?

腕と足を縛れば、それで…。

「ふん。我が学院に侵入する不届き者は、この程度の扱いが相応しいというものです」

イレースは憤然として、芋虫状態のネクロマンサーを見下ろした。

手厳しい。相変わらず。

「むしろ、すぐに警察に引き渡さないのを感謝して欲しいですね」

「ま、まぁまぁ…折角会えたんだから、もうちょっと穏便に…」

「何が穏便だ。敵だろ」

しかも、死体を操るなんて能力を持った敵だ。

情け容赦をくれてやる必要はない。

…とはいえ、このネクロマンサー…。

どう見ても…まだ…。

「ぐっ…。お前ら、調子に…!」

ん?

縛られたネクロマンサーは、ようやく正気に戻ったようで。 

再び族長の死体を操り、俺達を襲わせようとした。

おぉ、ゾンビ映画だ。

最初に見たときは、そりゃびびったもんだが…。

「…二回目はつまらんぞ」

ゾンビ映画もホラー映画も、初見だから怖いのだ。

二回目以降は、怖さ半減。

だって、何が出てくるのか分かってんだもん。

おまけに、初見のときとは違って。

今の俺達は、シルナの監督の元…万全のネクロマンサー対策を講じてある。

「よし、やれ。イレース」

「言われずとも」

イレースは、懐に隠していた小瓶を取り出した。

透明な液体が満たされた小瓶を、俺達は人数分用意してきた。

コルクを外し、イレースはその瓶の中身を族長の死体に頭から振り掛けた。

途端。

じゅわぁ…と音を立てて、死体がボロボロに溶けた。

…本当に、効果覿面だったようだな。

「…!?」

溶けた死体を見て、ネクロマンサーは俺達以上に驚愕していた。

…何だ、こいつ。

ネクロマンサーの癖に、知らなかったのか?
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