神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…やってくれるじゃないか、このガキ。

ただのガキだと思っていたら、痛い目を見るどころじゃない。

とはいえ。

こうして原因がはっきりしたからには、話は早い。

こいつが犯人なら、こいつを止めれば、それ以降俺達が魔法道具に襲われる危険はない。

「何で…それを知ってるんだ?」

ネクロマンサーのガキは、呆然としてナジュを見上げていた。

このガキは、ナジュが読心魔法使いであることを知らない。

従って、自分が今心を読まれているなんて、つゆほども気づいていないだろう。

ごめんな。こういうところ、ナジュの魔法はチートだから。

でも、お前が悪いんだぞ。素直に答えないから。

お前が最初から素直に答えてくれさえすれば、こっちだってナジュの読心魔法に頼らずに済んだんだ。

「何か…魔法でも使ってるのか?僕が本当のことを喋るように…。それとも、カマをかけてるだけ?」

「さぁ、どうでしょうね?言うはずないでしょう」

「…」

…残念だったな。

ナジュ相手に、そういうのは通用しないぞ。可哀想だけど。

「それで?尋問の続きを再開しましょう。あなたは何の目的を持って、学院長に近づいたんです?何の為に、里の族長の死体を…」

「…あーあ」

突然。

ネクロマンサーのガキは、うんざりしたような溜め息をこぼした。

…何だ?

今、一瞬…何処かから、腐敗臭が漂ってきたような気が。

「つまんない。本当つまんないよ、君達。こんなつもりじゃなかったのにさ」

「…」

「もうやめる。飽きちゃったよ」

…飽きただと…?

「お前…何言って…」

と、俺が言いかけたとき。

「っ!羽久っ!」

「!?」

シルナが、咄嗟に俺の背後に聖水をぶち撒けた。

驚いて振り向くと、ドロドロに溶けた死体がいた。

背後から襲いかかられるところだった。シルナが庇ってくれてなかったら、今頃ゾンビに噛まれてたぞ。

洒落にならない。

しかも、襲われたのは俺だけではなかった。

「っ、この数…!」

それは、さながら地獄絵図だった。

B級ゾンビ映画を見せられているような気分だ。

ボコッ、ボコッ、と地面が浮き上がり、そこから次々と死体が現れた。

…気色悪い光景だ。夢に出てきそう。

しかし、これは夢でも映画でもなく…紛れもない現実だった。

…これが冗談だったら、どんなに良かっただろうな。

「もうつまんないからさ…。これで終わりにするよ」

操った死体に、令月が巻いたロープを解かせ。

自由になったネクロマンサーは、居丈高に俺達を見下ろしていた。
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