神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
1万…1万年生きてるって?

何かの冗談…はったりじゃないのか?

しかし。

「どうやら、事実のようですよ」

ネクロマンサーの心を読んだナジュが、真面目な顔でそう言った。

何だと?

ナジュが断定するってことは…じゃあ、本当に。

このガキ、そんなに歳食ってんの?

見たところ、令月やすぐりよりも幼い体躯をしているのに…。

「何で…?」

身体と実年齢が、あまりにもちぐはぐだ。

「…有り得ない話じゃない」

と、シルナが言った。

「ネクロマンサーの魔力は、一般的な魔導師の性質とは大きく異なってる。それ故に…ネクロマンサーは身体的、精神的に未成熟であることが多いんだ」

…マジかよ。

確かにこいつ、実年齢の割には精神的に幼いもんな。

見た目は子供、中身も子供、でも年齢は超大人…ってことか。

最悪じゃないか。

「私が以前出会ったことのあるネクロマンサーも、15歳くらいで成長が止まってた。おまけに…その歳になっても、自分で歩くことが出来なかったんだ」

「…そんなことが…」

ネクロマンサーっていうのは…本当に、人外の能力なんだな。

いや…俺が言えた義理ではないのかもしれないが…。

それはそれ、って奴だ。

「分かった?俺をガキ呼ばわりするのはやめてくれるね」

ネクロマンサーは、勝ち誇ったように言った。

「…」

…そう言われてもな。見た目も中身もガキっぽいから…。

しかし、ネクロマンサーとしての能力は、ガキだと見下すことは出来なかった。

どうするんだ、この大量のゾンビ集団…。

すると、すぐりが。

「よ…っと」

両手に張り巡らせた糸で、バターのように死体を一刀両断。

そして、死体の全身をバラバラに引き裂いた。

強い腐敗臭が鼻を突き、思わず顔をしかめそうになる。

しかし、効果はあったようで。

さすがに、全身をバラバラの細切りされたら、起き上がることは出来なかった。

…ここまで完膚なきまでに破壊すれば、操り人形と言えど、再起不能らしいな。

首を落としたくらいじゃノーダメージだが、全身をバラバラにしてしまえば。

…随分と手間がかかりそうだ。

でも、やるしかない。

俺は、強く杖を握り締めた。
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