神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「そういえば、何だか持ってるだけで手がビリビリする」

「だろ?」

お前の光の魔力と、魔剣の持つ闇の魔力が相反してるんだよ。

無理して持たない方が良い。

…ろくな目に遭わないからな。

「光の魔力と、闇の魔力かー…。区別が難しいね」

まぁ、見た目だけじゃ分からないからな。自分の魔力が光か闇か、なんて。

別に知らなくても生きていけるし。

「難しく考えることはねぇよ。魔剣を使えるか否かの違いだけだ」

「そっか…。ジュリスは使えるんだよね」

「あぁ」

俺はの魔力は、闇の魔力だからな。

「ジュリスは、何でこの剣持ってるの?誰から取ったの?」

取ったの、ってお前。

まるで俺が盗んだかのように言うんじゃねぇ。
 
別に盗んできた訳じゃねぇよ。

「凄く強い武器なんだよね?」

「一応な」

「ジュリスは元々強いのに、こんなに強い剣を持ったら、あれだね。えーっと、こういうとき何て言うんだっけ…。鬼に、鬼に…」

…鬼に?

「あ、分かった。鬼に金属バットだ」

「…金棒だろ…」

物騒なもん持ってんじゃねぇぞ。

金属バットと金棒…似たようなものではあるけども。

「おお、そうだ。それそれ」

「…」

適当な奴だよ、全く。

…で、何で俺がこの剣を…『魔剣ティルフィング』を持ってるのか、だったな。

「話すと長くなるんだが…聞く気はあるか?」

「聞く気はある。でも、途中で眠くなっちゃわないか心配だな」

正直で宜しい。

既に眠いとか言ってるもんな。この部屋に来た時点で。

じゃあ、もうおしゃべりはなしにして、早く寝ろよと言いたいところだが…。

「どうやって手に入れたの?」

今のところベリクリーデは、興味津々である。

…分かったよ。

お前がその気なら、俺も覚悟を決めるよ。

…正直、あまり思い出したくない出来事なので、これまで誰にも明かさなかったんだが…。

まぁ、ここまで生きてりゃ…そろそろ潮時だろう。

「言っとくが、長いだけで面白い話じゃないぞ?」

「うん、良いよ」

「分かった」

じゃあ…話すとしますかね。

俺がどうやって、この『魔剣ティルフィング』を手に入れたのか。

…正義の為に生き、その正義に身を滅ぼされた…一人の少女の話を。
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