神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「他にも…お菓子をもらいにいったクラスメイトが、追い返されたり…」

「…」

「単におしゃべりをしに行っただけでも、『用事がないなら来るな』って、締め出されたそうです」

「…」

…有り得ない。

この生徒は、有り得ないことを言ってる。

「授業の後に、少し雑談をするつもりで話しかけたら…『授業の後に雑談してる暇があったら、さっきの復習をしなさい』って、怒られた子もいるそうです」

…。

「最近の学院長先生は、ずっとそんな感じ…。今まで学院長先生は気さくな人だったから、その…ギャップが、凄くて」

「…」

「怒鳴られたり、嫌味を言われる訳じゃないけど…。何だか近寄り難くて…」

…そうだな。

そんなことを言うシルナは、俺でも近寄りたくない。

「…あの、学院長先生…何かあったんですか?最近…」

「…」

何があったかなんて、俺が知りたいよ。

何があったんだ、シルナに。

「あっ…す、済みません…。変なこと聞いて…」

「…いや…」

「あ、あの。今日はありがとうございました。助かりました…」

何だか気まずい空気になったのを察して、女子生徒は慌ててノートと筆記具をまとめ、席を立った。

「お手数おかけしました…」

「いや…分からところがあったら、また、いつでも聞きに来ると良い。…その、学院長先生には、黙っておくから」

「は、はい。宜しくお願いします…」

ぺこり、と頭を下げて。

女子生徒は、荷物をまとめ、職員室を出ていった。

そして、一人取り残された俺は。

「…よし」

すぐさま、女子生徒の後を追うように立ち上がった。

さっき聞いた話は、本当なのか。

本当なのだとしたら、シルナに何があったのか。

直接、本人に確かめてみようと思った。
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