神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
さて、そうこうして、剣を返却。
すかさず斬り掛かってくるか…と思われたが。
律儀に約束を守っているのか、それとも実力差を理解しているのか、斬り掛かってこなかった。
意外と素直なんだな。
それどころか。
「くっ…。なんてことだ。この私が、よもや遅れを取ろうとは…!一生の不覚…!」
めちゃくちゃ悔しがっていた。
何だか申し訳なくなってくるな。だからといって斬られてやる義理はないが。
「…かくなる上は」
おっ?
剣を持った娘は、覚悟を決めた眼差しになった。
やっぱり斬り掛かってくるか、と一瞬身構えたが。
そんなことはなかった。
娘は俺に斬り掛かる代わりに、その場に両膝を付き、両手を揃えて頭を下げた。
…所謂、土下座という奴である。
いきなり土下座されて、びびった。
何をやってるんだ、この女。
「済まない。どうか…見逃してはくれまいか」
そして、そんな意味不明なことを言った。
…見逃す…?
「我らが奇妙に見えるのは分かる。しかし、我らは元より無害なのだ。人々を傷つけたり、暮らしを脅かすような真似は決してしない。僕の…この『魔剣ティルフィング』に誓って」
「…『魔剣ティルフィング』…?」
俺がその名前を聞いたのは、それが初めてだった。
その黒い剣、そんな名前だったのか。
そりゃまた、刀身に似合った立派な名前だな。
いかにも強そうじゃないか。
…いや、剣の名前なんて、今はどうでも良いな。
それより…気にかかるのは。
「ちょっと待てよ。お前さっきから、何を言ってる?」
「今ここで僕達を見逃してくれるなら、この恩はいつか必ず…」
「いや、だからちょっと待てって」
何の話だよ。勝手に進めるんじゃねぇ。
何だか、えらく変な方向に誤解していないか?
どうやらこの女…俺のことを、故郷を襲いに来た侵入者だと思い込んでいるらしい。
「俺は別に、お前達の土地を奪いに来た訳じゃないぞ?」
「え?」
え?じゃなくて。
「襲撃者じゃない…?それなら、何でここに?」
「何でここにと言われても…成り行きだよ。俺はただの旅人だ。ここ数日、ずっと森の中を彷徨ってたから…夜を明かす為に、今晩の宿を探していたところだ」
「…」
青天の霹靂、みたいな顔をして、魔剣の持ち主はポカンと俺を見つめ。
そして。
「…え?じゃあ、僕達の敵…な訳じゃないのか?」
「…さっきから、そうだって言ってるだろ…」
「…」
おせーよ、気づくの。
そういうことは、斬り掛かる前に確かめろっての。
うっかり斬り殺されてたら、どうしてくれるところだったんだ。
すかさず斬り掛かってくるか…と思われたが。
律儀に約束を守っているのか、それとも実力差を理解しているのか、斬り掛かってこなかった。
意外と素直なんだな。
それどころか。
「くっ…。なんてことだ。この私が、よもや遅れを取ろうとは…!一生の不覚…!」
めちゃくちゃ悔しがっていた。
何だか申し訳なくなってくるな。だからといって斬られてやる義理はないが。
「…かくなる上は」
おっ?
剣を持った娘は、覚悟を決めた眼差しになった。
やっぱり斬り掛かってくるか、と一瞬身構えたが。
そんなことはなかった。
娘は俺に斬り掛かる代わりに、その場に両膝を付き、両手を揃えて頭を下げた。
…所謂、土下座という奴である。
いきなり土下座されて、びびった。
何をやってるんだ、この女。
「済まない。どうか…見逃してはくれまいか」
そして、そんな意味不明なことを言った。
…見逃す…?
「我らが奇妙に見えるのは分かる。しかし、我らは元より無害なのだ。人々を傷つけたり、暮らしを脅かすような真似は決してしない。僕の…この『魔剣ティルフィング』に誓って」
「…『魔剣ティルフィング』…?」
俺がその名前を聞いたのは、それが初めてだった。
その黒い剣、そんな名前だったのか。
そりゃまた、刀身に似合った立派な名前だな。
いかにも強そうじゃないか。
…いや、剣の名前なんて、今はどうでも良いな。
それより…気にかかるのは。
「ちょっと待てよ。お前さっきから、何を言ってる?」
「今ここで僕達を見逃してくれるなら、この恩はいつか必ず…」
「いや、だからちょっと待てって」
何の話だよ。勝手に進めるんじゃねぇ。
何だか、えらく変な方向に誤解していないか?
どうやらこの女…俺のことを、故郷を襲いに来た侵入者だと思い込んでいるらしい。
「俺は別に、お前達の土地を奪いに来た訳じゃないぞ?」
「え?」
え?じゃなくて。
「襲撃者じゃない…?それなら、何でここに?」
「何でここにと言われても…成り行きだよ。俺はただの旅人だ。ここ数日、ずっと森の中を彷徨ってたから…夜を明かす為に、今晩の宿を探していたところだ」
「…」
青天の霹靂、みたいな顔をして、魔剣の持ち主はポカンと俺を見つめ。
そして。
「…え?じゃあ、僕達の敵…な訳じゃないのか?」
「…さっきから、そうだって言ってるだろ…」
「…」
おせーよ、気づくの。
そういうことは、斬り掛かる前に確かめろっての。
うっかり斬り殺されてたら、どうしてくれるところだったんだ。