神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「…そうとも知らず、大変な無礼を…。失礼した…」

危うく殺されかけたところだったから、謝罪くらいで済ませるのはヌルいかもしれないが。

あの程度じゃ俺は殺されないし、とにかく無事だったんだから、まぁ良しとしておくよ。

「大丈夫だ。土下座はやめろ、重いから」

「…あ、あぁ…。…その、それはそうと」

と、娘は顔を上げた。

「今晩の宿を探しているとのことだが、その、良かったら…僕の家に来ないか?」

おっ。

これは願ってもない申し出。

「良いのか?」

「あぁ。無礼を働いたお詫びと…。それに…君を相当の武人と見て、頼みたいこともある」

頼みたいこと…?

それは、面倒事じゃないだろうな?

「僕の住む村は、すぐそこにある。一緒に行こう」

ちょっと待て、頼みたいことって何だ。

こういうことは、ちゃんと確認してから行くべき…なのは分かっていたが。

既に辺りは暗くなり、今夜はもう、これ以上旅を続けることは出来なかった。

…頼みたいことっていうのが何なのか、は気になるが。

ともかく、今夜は屋根のある場所で眠れそうだし。

ついていくだけ、ついていってみるか。

俺はそんな軽い気持ちで、道案内する娘の後をついていった。
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