神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
お前も、聞きたいことは山程あるだろうが。

俺だって、聞きたいことはある。

何せ、そんな武器を目にするのは初めてなんだからな。

「お前、その武器を何処で手に入れた?」

「これはこの村に、昔から伝わってきた神器だ」

神器、ねぇ。

まぁ、そう呼ぶに相応しい代物ではあるだろう。

「長い間、これを扱える者はいなかった。ずっと村の神器として、神棚に祀られてきた」

「その神器を…お前が使うことが出来たって訳か」

「そうだ。この村で魔剣を扱える者は、僕が二人目だったそうだ」

二人目?ってことは、一人目がいた訳か。

「一人目は誰だ?」

「もう大昔に死んだ。この村の開祖と言っても良い。その人物…女性だったそうだが…その者が最初の英雄で…彼女が死んで以来、魔剣を扱える者は誰もいなかった」

…成程、話が見えてきたぞ。

「つまり、開祖である最初の英雄の死後、魔剣の力を使うことが出来たのはお前だけ。お前が英雄の再来って訳か」

「その通りだ。話が早くて助かる」

ありがちな話じゃないかよ。

全く、いくら伝説の武器を扱えるからって、こんな小娘を英雄と祀り上げるとは。

人間ってのは、英雄が好きだな。

「僕はこの村の英雄として、土地を、村人の命を守る義務がある」

「…重いだろ、そんな責任」

「いいや、むしろ誇らしい。僕にしか果たせない務めなんだから」

そりゃ大層なことで。

まぁ、自分に課せられた使命の重さに押し潰され、嘆いているよりはマシか。

お前にしか果たせない務め、ねぇ…。

なんつーか、部外者の俺にとっては、面倒事を押し付けられてるようにしか見えなくて、気の毒なんだが。

本人が良いなら、それで良いのかね。

…でも、そういう問題じゃないんだよな。

少なくとも、その魔剣に関しては。
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