神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「僕はこの剣を用いて…村を襲う脅威に立ち向かわなければならないんだ」

「…村を襲う脅威?」

「…それは…」

ユリヴェーナは、一瞬口ごもったが。

ここまで打ち明けた話をしておきながら、この期に及んで隠し事をするのは気が引けたのか。

「…この村の人々は昔から…外の世界の干渉に怯えながら生きているんだ」

と、教えてくれた。

「特に、ここ最近は…。…見ただろう?夜の間も灯りを絶やさず、各家々で寝ずの番を立てて備えている」

「あぁ、そうだな」

「皆殺気立っているんだ。先程村人が、君を余所者呼ばわりして追い出そうとしたのも…それが理由なんだ」

…成程。

俺は、村の敵だと思われた訳だな。

恐らく、そんな俺が村に入ることを許されたのは、他ならぬ村の英雄…ユリヴェーナがついているからだ。

何かあったら、英雄が始末をつけてくれる。だからこそ、俺はここにいられるのだ。

そうじゃなかったら、今頃熊手で殴られて追い払われてただろう。

笑えない冗談だ。

「この村は、別名『秘境の村』と呼ばれている。昔から、占いや占星術を生業に生きてきた」

秘境の村…。

確かに、かなり人里離れた森の奥に位置している。

俺は半ば迷い込むようにして、ここに辿り着いたが…。

もう一回同じ道を辿ってこいと言われたら、多分無理だろうな。

それくらい、隠れた場所にある村だ。

だからこそ、これほど閉鎖的な空気が蔓延しているのだろう。
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