神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「イレースちゃん…君まで、私を否定するの?」
「当たり前でしょう。偽物の分際で、生意気なことを言うんじゃありません」
手厳しい。
さすがはイレースである。
「でも、君にとっては、私が学院長になる方が都合が良いんじゃないの?」
「えぇ、そうでしょうね」
それは認めるんだ。
さすがはイレースである。
「大体この学院長は、学院の厳しい経営状態も知らず、毎月のように多額のおやつ代を使い込み、それを生徒にばら撒いているんですから。毎月毎月、菓子の請求書が来る度に、学院長を丸焦げにしたい衝動を必死に抑えてますよ」
「…」
オリジナルシルナ、ガクブル。
お前、いつかイレースに丸焦げにされるだろうな。
…しかし。
「でも、それはそれ、これはこれです。使い込みをしないから、雑務を積極的にこなすから…それが何だって言うんです?イーニシュフェルト魔導学院の学院長は、シルナ・エインリーです。シルナ・エインリーの顔をした偽物ではありません」
「…!」
…だよな。
俺も同じ気持ちだよ、イレース。お前の言う通りだ。
「…大体、あなた教員免許持ってないでしょうが。学院長になりたいなら、教員免許くらい取ってから言いなさい」
そこかよ。
いや、それは確かに大切なことだけど。
よく気がついたな。俺、全然気づかなかったよ。
「そういう訳ですから、さっさとお引取り願います。偽物の居場所はここにはありません」
「…」
俺に続いて、イレースにも存在を否定されたドッペルゲンガーシルナ。
今この場にはいないが、天音も、ナジュも、令月やすぐりも、きっと同じことを言うだろう。
俺達にとっての恩人は、このドッペルゲンガーではない。
例え、学院長としてだらしなかろうと、甘い物に溺れていようと。
シルナじゃないシルナなんて、そんなのただの他人だろう?
恩人を他人と履き違えるほど、耄碌しちゃいないよ。
「羽久…。イレースちゃん…」
涙目のオリジナルシルナが、ぐすっ、と鼻を啜っていた。
やれやれ。
「…まぁ、真面目な学院長というのも、ちょっと未練がありますが」
「ちょ、イレースちゃん!?」
「冗談です」
冗談に聞こえなかったよ。
今の本音だろ?本音がポロッと出たんだろう?
それは分かるけども。抑えようぜ。
「…そっか。それなら、仕方ないね」
ドッペルゲンガーシルナは、溜め息混じりにそう言った。
お、何だ。やるか?
「だったら、力ずくで奪い取らせてもらうよ」とか言って、これからドンパチやり合う気か?
やれるものならやってみろ。返り討ちにしてやる。
と、思ったが。
「分かった。私は消えるよ」
…え?
「当たり前でしょう。偽物の分際で、生意気なことを言うんじゃありません」
手厳しい。
さすがはイレースである。
「でも、君にとっては、私が学院長になる方が都合が良いんじゃないの?」
「えぇ、そうでしょうね」
それは認めるんだ。
さすがはイレースである。
「大体この学院長は、学院の厳しい経営状態も知らず、毎月のように多額のおやつ代を使い込み、それを生徒にばら撒いているんですから。毎月毎月、菓子の請求書が来る度に、学院長を丸焦げにしたい衝動を必死に抑えてますよ」
「…」
オリジナルシルナ、ガクブル。
お前、いつかイレースに丸焦げにされるだろうな。
…しかし。
「でも、それはそれ、これはこれです。使い込みをしないから、雑務を積極的にこなすから…それが何だって言うんです?イーニシュフェルト魔導学院の学院長は、シルナ・エインリーです。シルナ・エインリーの顔をした偽物ではありません」
「…!」
…だよな。
俺も同じ気持ちだよ、イレース。お前の言う通りだ。
「…大体、あなた教員免許持ってないでしょうが。学院長になりたいなら、教員免許くらい取ってから言いなさい」
そこかよ。
いや、それは確かに大切なことだけど。
よく気がついたな。俺、全然気づかなかったよ。
「そういう訳ですから、さっさとお引取り願います。偽物の居場所はここにはありません」
「…」
俺に続いて、イレースにも存在を否定されたドッペルゲンガーシルナ。
今この場にはいないが、天音も、ナジュも、令月やすぐりも、きっと同じことを言うだろう。
俺達にとっての恩人は、このドッペルゲンガーではない。
例え、学院長としてだらしなかろうと、甘い物に溺れていようと。
シルナじゃないシルナなんて、そんなのただの他人だろう?
恩人を他人と履き違えるほど、耄碌しちゃいないよ。
「羽久…。イレースちゃん…」
涙目のオリジナルシルナが、ぐすっ、と鼻を啜っていた。
やれやれ。
「…まぁ、真面目な学院長というのも、ちょっと未練がありますが」
「ちょ、イレースちゃん!?」
「冗談です」
冗談に聞こえなかったよ。
今の本音だろ?本音がポロッと出たんだろう?
それは分かるけども。抑えようぜ。
「…そっか。それなら、仕方ないね」
ドッペルゲンガーシルナは、溜め息混じりにそう言った。
お、何だ。やるか?
「だったら、力ずくで奪い取らせてもらうよ」とか言って、これからドンパチやり合う気か?
やれるものならやってみろ。返り討ちにしてやる。
と、思ったが。
「分かった。私は消えるよ」
…え?