神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
「天音!いるか!」
勢いよく職員室に飛び込むと、職員室の中にいた天音が、びくっと身体を震わせた。
いたぞ。ナジュの言う通りだ。
しかし問題は、この天音が本物であるかどうかだ。
「び、びっくりした…。な、何…?」
恐る恐る振り返る天音。
まるで本物のように見えるが、油断してはいけない。
目の前にいるこの天音は、レントを保健室から追い返し、ユリナにろくでもないことを言いやがった、偽物の天音である可能性があるのだ。
常に疑ってかかるくらいの気持ちでないと。
申し訳ないが、今ばかりは、天音が何を言っても100%信用する訳にはいかない。
まずは、カマをかけるところから始めてみよう。
「お前、生徒に余計なことを言いやがって。天音のフリしてんじゃねぇそ、この偽物め!」
「え、えぇぇぇ?」
びっくり仰天する天音(仮)。
本物である確信が持てるまで、天音はずっと仮だ。
「白状しろ!お前が偽物だってことは分かってるんだぞ」
「ちょ、羽久さん?何言って…。僕は正真正銘…本物の天音だよ!」
何だと?
その言葉を信じたいが、しかし簡単に信じて騙されたんじゃ馬鹿みたいだからな。
根拠のない本物宣言は、信じないぞ。
「いたいけな一年生を泣かせて、何考えてるんだお前は。偽物に決まってる!」
「い、一年生を泣かせた…?僕が?何で?」
「しらばっくれてんじゃねぇ!」
「そ、そんなぁ…」
天音(仮)が、困り果てた顔をしていると。
「ま、まぁまぁ羽久、落ち着いて」
と、シルナが割って入った。
「落ち着いてられるか。こいつが偽物の、ドッペルゲンガー天音かもしれないんだぞ」
「そうだけど、でも本物である可能性だってあるよね?確かめる術がない以上、天音君が本物であるかどうかは半々なんだ。疑ってかかるのは良くないよ」
…全く甘いことを言いやがる。
ドッペルゲンガー天音に付け入られたら、どうするつもりなんだ。
…すると。
「…本物だと思いますよ、この人は」
ナジュが、天音を見つめながら言った。
何?
「何か根拠があるのか?」
「少なくともこの天音さんは、自分が天音さんであると確信しています。心の中を読めば分かります」
あ、成程…。
…。
…え、マジ?
「ナジュに心を読んでもらったら、本物かどうか一発で分かるってことか…?」
何だよそれ。最強じゃないか。
「いえ、そうとも言えませんよ。ドッペルゲンガーの方もまた『自分は本物である』と思っていたら、区別がつきません」
「あ、そうか…」
ドッペルゲンガーシルナは、自分がドッペルゲンガーだと自覚していたが。
もしかしたら、自分をドッペルゲンガーだと思っていない…自分こそオリジナルだと思いこんでいるドッペルゲンガーも、いるかもしれない。
そうなると、ナジュでも区別はつかないよな。
安易に読心魔法には頼れないってことか。口惜しいが。
勢いよく職員室に飛び込むと、職員室の中にいた天音が、びくっと身体を震わせた。
いたぞ。ナジュの言う通りだ。
しかし問題は、この天音が本物であるかどうかだ。
「び、びっくりした…。な、何…?」
恐る恐る振り返る天音。
まるで本物のように見えるが、油断してはいけない。
目の前にいるこの天音は、レントを保健室から追い返し、ユリナにろくでもないことを言いやがった、偽物の天音である可能性があるのだ。
常に疑ってかかるくらいの気持ちでないと。
申し訳ないが、今ばかりは、天音が何を言っても100%信用する訳にはいかない。
まずは、カマをかけるところから始めてみよう。
「お前、生徒に余計なことを言いやがって。天音のフリしてんじゃねぇそ、この偽物め!」
「え、えぇぇぇ?」
びっくり仰天する天音(仮)。
本物である確信が持てるまで、天音はずっと仮だ。
「白状しろ!お前が偽物だってことは分かってるんだぞ」
「ちょ、羽久さん?何言って…。僕は正真正銘…本物の天音だよ!」
何だと?
その言葉を信じたいが、しかし簡単に信じて騙されたんじゃ馬鹿みたいだからな。
根拠のない本物宣言は、信じないぞ。
「いたいけな一年生を泣かせて、何考えてるんだお前は。偽物に決まってる!」
「い、一年生を泣かせた…?僕が?何で?」
「しらばっくれてんじゃねぇ!」
「そ、そんなぁ…」
天音(仮)が、困り果てた顔をしていると。
「ま、まぁまぁ羽久、落ち着いて」
と、シルナが割って入った。
「落ち着いてられるか。こいつが偽物の、ドッペルゲンガー天音かもしれないんだぞ」
「そうだけど、でも本物である可能性だってあるよね?確かめる術がない以上、天音君が本物であるかどうかは半々なんだ。疑ってかかるのは良くないよ」
…全く甘いことを言いやがる。
ドッペルゲンガー天音に付け入られたら、どうするつもりなんだ。
…すると。
「…本物だと思いますよ、この人は」
ナジュが、天音を見つめながら言った。
何?
「何か根拠があるのか?」
「少なくともこの天音さんは、自分が天音さんであると確信しています。心の中を読めば分かります」
あ、成程…。
…。
…え、マジ?
「ナジュに心を読んでもらったら、本物かどうか一発で分かるってことか…?」
何だよそれ。最強じゃないか。
「いえ、そうとも言えませんよ。ドッペルゲンガーの方もまた『自分は本物である』と思っていたら、区別がつきません」
「あ、そうか…」
ドッペルゲンガーシルナは、自分がドッペルゲンガーだと自覚していたが。
もしかしたら、自分をドッペルゲンガーだと思っていない…自分こそオリジナルだと思いこんでいるドッペルゲンガーも、いるかもしれない。
そうなると、ナジュでも区別はつかないよな。
安易に読心魔法には頼れないってことか。口惜しいが。