神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
…ドッペルゲンガー風情に、好き勝手させてたまるか。
俺もまた、鼻血を押さえたまま杖を握った。
「wlos nowd」
俺が杖を振ると当時に、あれだけ俊敏だったドッペルゲンガー天音の動きが、スローモーションのように遅くなった。
時魔法で、ドッペルゲンガー天音の動きを最大限に遅くしたのだ。
「おいシルナ!起きろ!伸びてる場合じゃないぞ!」
「ふぇぇぇぇ、顔痛い…」
硬い床に顔面ダイブしたシルナは、半泣きで顔を押さえていたが。
今はそれどころじゃない。
「偽物の動きを止めるんだ!」
「う、うぅ。分かったよ…。…erachna」
シルナが杖を振ると、ドッペルゲンガー天音は全身の蜘蛛の糸に絡まれ、その場に釘付けにされた。
こうなれば、袋のネズミも同然。
「今だ、天音!」
自分の偽物は、自分の手で始末をつけたいだろう。
思う存分やると良い。
「ありがとう。…aegm solinesh」
先程より強力な光魔法が、ドッペルゲンガー天音に叩き込まれた。
ドッペルゲンガーの耐久力って、どうなっているのだろうと思ったが。
天音の渾身の一撃には、さすがのドッペルゲンガー天音も耐えられなかった。
空気を入れ過ぎた人形が、弾けて割れるかのように。
耐久限界を迎えたドッペルゲンガー天音は、霧散して消えてしまった。
…やった、か…。
あの野郎、やるだけやって退場しやがった。
勢いに任せて、やっつけてしまったは良いが。
どうするんだ、この惨状と化した保健室。
退場させるなら、まずここを片付けさせてから倒せば良かった。
しかし、天音本人は。
ドッペルゲンガーを倒した喜びもなければ、惨状と化した保健室を前に、溜め息をつくこともなかった。
それよりも、何より先に。
「ナジュ君…ナジュ君、大丈夫?」
頭から硫酸を被って、つい先程まで酷い顔になっていたナジュに駆け寄っていた。
「もう治りましたよ。男前でしょう?」
「うん…。ごめんね、痛かったでしょ?」
「別に平気ですよ」
平気と言うが、こいつの平気は一般人とはかけ離れている。
顔が溶けるほどの大怪我をしておいて、平気なはずがない。
天音も、それが分かっているのだろう。
「ごめんね…」
酷く申し訳無さそうに、ナジュに何度も謝っていた。
厳密には、悪いのは天音のドッペルゲンガーであって、天音が悪い訳じゃないんだけどな。
自分と同じ顔をした偽物が、自分の親友を痛めつけたという事実が、余程堪えたらしい。
俺もまた、鼻血を押さえたまま杖を握った。
「wlos nowd」
俺が杖を振ると当時に、あれだけ俊敏だったドッペルゲンガー天音の動きが、スローモーションのように遅くなった。
時魔法で、ドッペルゲンガー天音の動きを最大限に遅くしたのだ。
「おいシルナ!起きろ!伸びてる場合じゃないぞ!」
「ふぇぇぇぇ、顔痛い…」
硬い床に顔面ダイブしたシルナは、半泣きで顔を押さえていたが。
今はそれどころじゃない。
「偽物の動きを止めるんだ!」
「う、うぅ。分かったよ…。…erachna」
シルナが杖を振ると、ドッペルゲンガー天音は全身の蜘蛛の糸に絡まれ、その場に釘付けにされた。
こうなれば、袋のネズミも同然。
「今だ、天音!」
自分の偽物は、自分の手で始末をつけたいだろう。
思う存分やると良い。
「ありがとう。…aegm solinesh」
先程より強力な光魔法が、ドッペルゲンガー天音に叩き込まれた。
ドッペルゲンガーの耐久力って、どうなっているのだろうと思ったが。
天音の渾身の一撃には、さすがのドッペルゲンガー天音も耐えられなかった。
空気を入れ過ぎた人形が、弾けて割れるかのように。
耐久限界を迎えたドッペルゲンガー天音は、霧散して消えてしまった。
…やった、か…。
あの野郎、やるだけやって退場しやがった。
勢いに任せて、やっつけてしまったは良いが。
どうするんだ、この惨状と化した保健室。
退場させるなら、まずここを片付けさせてから倒せば良かった。
しかし、天音本人は。
ドッペルゲンガーを倒した喜びもなければ、惨状と化した保健室を前に、溜め息をつくこともなかった。
それよりも、何より先に。
「ナジュ君…ナジュ君、大丈夫?」
頭から硫酸を被って、つい先程まで酷い顔になっていたナジュに駆け寄っていた。
「もう治りましたよ。男前でしょう?」
「うん…。ごめんね、痛かったでしょ?」
「別に平気ですよ」
平気と言うが、こいつの平気は一般人とはかけ離れている。
顔が溶けるほどの大怪我をしておいて、平気なはずがない。
天音も、それが分かっているのだろう。
「ごめんね…」
酷く申し訳無さそうに、ナジュに何度も謝っていた。
厳密には、悪いのは天音のドッペルゲンガーであって、天音が悪い訳じゃないんだけどな。
自分と同じ顔をした偽物が、自分の親友を痛めつけたという事実が、余程堪えたらしい。