あなたに好きと言えるまで
初めての天文部の当番の日の朝、
気分が少し高揚していることに気づいた。
何も起こるはずないのに、、何かを期待している自分がいる。
彼が当番のことを忘れていないか心配で、教室に入るなり自分の席にいた君嶋くんに声を掛けた。
「おはよう君嶋くん、今日は当番だからね12時半には屋上に来てよ」
彼は笑顔で軽く手を挙げて返事をしたのに、、その時刻を過ぎても屋上の観測ドームに彼は現れなかった、私が教室を出る時には既に彼の姿は無かったから先に来ていると思っていた、、
やがて10分が過ぎ観測が終わりかけた頃、
「白河さん、ごめん、忘れてた」
申し訳なさそうに頭を掻きながら謝る姿が観測ドームの入り口にあった。
だから忘れないように声を掛けましたけど、、
毎日の事じゃないから私だって忘れそうになるんだから、
「もう終わっちゃった?」
そう言いながら望遠鏡の横で椅子に座る私の傍らに立って、私の手元にある観測用紙を覗き込もうとした時、肩に彼の腕が触れる、、
もう近いって、、、
背中に彼の体温を感じるぐらいの距離に動揺してしまう、
私の肩越しに手元にある観測用紙を指先で摘んで取り上げると、目を細めてジッと用紙を見つめた。
そういえば彼は視力があまり良くなかった、授業中はいつも眼鏡をしている。普段の生活には支障はないのだろうか、裸眼の時はある程度近づけないと見えないみたいだった。
「白河さん、これどうやってやるの?」
あっそっか、彼はこの前のミーティングに参加していないから知らないんだ、
「大事なミーティングを欠席するからだよ、やり方の説明もあったんだから」
「ごめん、教えて貰えないかな」
手の平を合わせて頼み込む彼の仕草が可愛くて、ついつい意地悪したくなる、
「うーん、どうしようかなー」
「意地悪しないでよ、今度お昼にアンパン奢るからさ」