あなたに好きと言えるまで

あんぱん?

「なんでアンパンなの! 普通はアイスとかでしょ!」

「アイスは購買に置いてないし、顔を見てたら何となく、、」

バシッと思い切り背中を叩いてやった、ふん!
「確かに私は丸顔ですけど、小さいんだからいいの! 今日はもうあまり時間がないからまた今度やりながら教えるよ、まだ観測日誌を書かなきゃいけないし」

「そっか、じゃあ悪いから、それは僕が書くよ」

円形の観測ドームの、孤の字型の壁際に張り付くように置かれた椅子に座り、机の上の日誌を開いて書く姿が、私の目には普段の彼と違って映る、教室では私の方が前方の席だから彼の後ろ姿が新鮮に見えて、意外にも背筋を伸ばした姿勢が良いのにも驚かされた。寝癖を慌てて直したのか、直り切らずにひとつまみ分の毛先が少し跳ねているのにクスッと笑ってしまう。

ドームの中は狭い、中央に望遠鏡がどっかりと腰を下ろしているため、その周りは限られた狭いスペースで、更にその半分は観測用の資料や道具が占領していた。その狭い場所に男の子と二人きりでいる私、近過ぎる距離、それを意識した途端に胸がキュっと締め付けられた。
胸に手を当てて感情を推し量っても理解することができない、こんな気持ちは初めてだ、
やだ、手も震えてる? 明らかに緊張していた、、


ドキドキしている自分、
気になる男の子と二人っきりの空間、、

入り口のドアは開け放たれていて、外では解放された屋上に数人の生徒が遊んでいたけど、壁一枚とはいえ此処とは隔たれた別世界のように思える。
隠れた場所での男女の密会みたいじゃない、、と勝手に解釈してしまった結果、ひとり妙な緊張感に襲われてしまったのだ。静まり返ったドームの中、高まる鼓動が彼に聞こえるぐらい大きくて速い、
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