激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
役目
「美宙ちゃん、顔隠さないでこっちを見て」
「……だ、だって穂貴さんっ、恥ずかしいですっ」
薄暗い部屋の中、ベッドのスプリング音が聞こえて私の上には彼が跨っている。お互いに、吐く息が乱れているのに私だけ余裕がない。
「恥ずかしいことはないよ。可愛い顔、もっと見せて」
艶っぽい彼は私の指を絡ませて手をぎゅっと握った。その反射なのか私もぎゅっと握る。すると、さっきよりも深い甘いキスが降ってくる。
「……んんっ、ほだかさっ」
「可愛い、美宙ちゃん」
私が、この穂貴さんと婚約して半年。
半年で彼にこんなに絆されることになるなんて思いもしなかった。こんなに愛されるなんて、夢にも思わなかった。
「美宙ちゃん、どうか俺を受け入れて……っ」
手を繋いでいる状態で彼が私の中に入ってくるのを感じて甘い声が溢れる。
「愛してるよ、美宙ちゃん」
私はその声を聞きながら、あの日の……昨日のことのように覚えている半年前のことを思い出した。
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