激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
「そういうことでしたか。大丈夫ですよ、無理はさせません……軽い散歩でしたら植物園に行きませんか? 美宙さんが良ければですが」
「植物園……藤乃さんは、お好きなんですか?」
「えぇ、とても。植物を見るのはとても楽しいです、心癒されますし仕事にも繋がっているので」
藤乃さんはとても楽しげに植物園の魅力を語ってくれた。その様子がとても可愛らしくて年上には見えない。
「藤乃さんは、染織家をされていらっしゃるんですよね? どんなお仕事か伺ってもよろしいでしょうか?」
「はい、喜んで。染織家は、織物と染め物の両方を手掛ける作家のことをいいます。まず染め物には、草木染め、型染め、捺染、注染、ろうけつ染め、シルクスクリーンプリントなどとたくさんの種類に多様な技法があって染料の種類も多いんです。それに織物が持つ表現力と可能性は奥深くてですね……縦糸に横糸を通して生地に仕立てるものなんですが、糸を変えることで繊細な柄を描くことも可能なんです。私がやっているのは……あっ、すみません。ベラベラと話してしまって」
「ふふ、とても勉強になります。もっと知りたいです」
「そんなふうに言っていただけたのは初めてです。私は草木染めというのをしていまして、なので植物園に行って色々な草木を見るのです。まぁ、仕事も兼ねてみたいな感じなんですけど」
藤乃さんはとても楽しそうに、植物の話や染色のこと織物のことを私でもわかりやすいように砕いて話をしてくれた。なんだかお勉強教室になってしまったけどそれは楽しくて幸せな時間だった。
植物園に行く予定だったのに、話だけして時間が遅くなるといけないからと藤乃さんは家まで送ってくれた。