激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜


 ***


 それからの藤乃さんの行動は早かった。すごく早かった。
 まず、荷物を取りに行くかと思いきや……旦那様から『荷物は届けさせます』と連絡が入ったので藤乃さん宅に向かうことになった。


「……宮下さん、今日はありがとうございました」

「いいえ。とんでもございません。では、何かありましたらご連絡ください」


 藤乃さん宅に着くと宮下さんは帰って行った。藤乃さんは家の鍵を開けて、私を招き入れる。


「えっと、見た目通りここは三階まであります。えっと、一階がアトリエがあります。えっと、あのデカいのが織り機。あと染め物するための鍋とコンロにシンクと作業台。まぁ、詳しくは後で説明するね」


 一階はアトリエ、二階は書斎や個室、寝室。そしてお風呂やトイレの水回りがあり、三階はキッチンとリビングとなっていて、どの階もお洒落で何だか異国情緒が感じられる。



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