激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
それから食べ終わった私は、穂貴さんに誘われるまま一階にあるアトリエに向かった。アトリエには同居開始した翌日に草木染めをさせてもらった。真っ白の糸が、染色によって色が変わる様子がとても綺麗だった。それに太陽にあてて自然光で輝く糸を見たらこれが一つの布へ変身する姿を早く見てみたいと思ったほどだ。
穂貴さんは織り機に座り、織り機の名称や糸のことを解説し丁寧に織り方も私にもわかるように説明してくれた。
まずは、 杼というところに糸をセットをする。すると、経糸というところの間へ通すように滑らせて緯糸を織って入れる。次に足を踏みかえてから糸の上下を入れ替える。それからトントンと手元に糸を寄せて、織り入れてから踏みかえる。そして筬というものを打つ。
「……この繰り返しで糸が織り重なって、織ったその人だけの唯一無二の表情が生まれるんだ。たとえ同じ糸、同じ図案で織っても人によっては違う表情を見せてくれるんだ。美宙ちゃん、ここに座って」
「は、はいっ」
「そんなに緊張しないでいいんだよ。肩の力を抜いて」
穂貴さんはそう言ってくれたけど、失敗したらどうしようとか壊してしまったらどうしようとか考えたら手が震えてしまう。