激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
ところ変わって、家から近くにあるBAR。
俺は、美宙ちゃんに出かけてくると言って弟と待ち合わせていた。
「……兄さん! 久しぶりだね〜」
「貴斗、久しぶり」
貴斗は、俺の2つ下の弟だ。俺が染織家をすることができているのは彼のおかげである。普通なら実家が経営している藤乃出版の社長に俺がなるべきだが、俺が染織の道に進みたいことを知ると貴斗が社長になると言ってくれた。その代わり、藤乃家当主としてよろしく、とは言われたが。
藤乃家は、旧華族の末裔だ。確か、伯爵の位をいただいていたらしい。その名残で今も当主だとかそういうのがある。そういうのは弟は嫌いなのだ。
「そうだ、美宙さんとはどうなの? 強引に、同居進めたんでしょ?」
「あぁ。めちゃくちゃ可愛い……幼い頃と変わらず、純粋で」
「純粋かぁーうちでやっていけるかな、美宙さん。元々は旧華族の末裔だとはいえ本人はそのことを知らないんでしょう?」
「そうだな。如月の家では、監禁されていたみたいだ。本人は自覚はなくて、不自由なく過ごさせてもらったと言っているが……本当なら鷹司家の姫君なのにな」