激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜



 実のところ、彼女……美宙ちゃんは旧華族の末裔だ。
 鷹司家は、華族制度廃止前は公爵の爵位があり皇族の姫君が降嫁をした家でもある。だがなぜ、そんな由緒ある家の姫・美宙ちゃんが施設で育ち如月家にいるのかは彼女が幼い頃に遭った事故が原因だ。その事故で鷹司家当主である美宙ちゃんのお父様と奥様で美宙ちゃんのお母様は亡くなってしまった。だが美宙ちゃんは助かったのだが、記憶をなくし行方がわからなくなった……それを知った時は彼女がどこかの施設に預けられた後だったのだ。


「彼女には言うのか? 今だに記憶はないんだろう……兄さんにとっては初恋の女の子でも、彼女はあったことないことになってるしなぜ自分が兄さんと婚約できたかわからないんじゃないのかな」

「それはそうだな、だが。一度は結婚する約束をした仲なんだ。もう一度惚れさせるよ」

「そっか。あ、そういえば如月家は無関係だった。美宙さんが旧華族の末裔なんだとは知らないよ……知らないなら、兄さんに嫁がせたりはしないと思う。ただ、旧華族と繋がりがほしいだけっぽいから」


 やはりな……あの家は、何も知らずに引き取っていると思う……知っていたら、自分の息子の嫁にするだろう。
 その後は貴斗と二、三杯飲み、会社のことを話をした。一応俺も副社長の肩書きがあるから、たまには出社してというお誘いと母さんが美宙ちゃんとお茶がしたいと言うお誘いだった。


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