激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
「あっ、美宙ちゃん! いらっしゃい」
そこには彼のお母様と、この会社の社長さんで彼の弟さんがいた。
「お久しぶりですっ、あの、一緒に住まわせていただいてるのに……ご挨拶ができなくて」
「そんなこといいのよ。穂貴くんが強引に決めちゃったんでしょ? だからいいの」
お母様は優しく微笑んでくださってその顔が彼に似ていて安心感を覚えた。そういえば、穂貴さんいつまで手を繋いでるのだろう……?
「美宙ちゃん。俺が迎えに行くから、連絡してね」
「連絡、ですか?」
「うん、そうだよ……あ、そういえば連絡先聞いてなかったよね教えて」
「……あの、穂貴さん。私、連絡する手段のもの持ってなくて」
実のところ、お嬢様が持っていた連絡手段であろうスマートフォンは持っていない。ほとんど家にいたし、友人もいなかったので必要なことがなかった。
「「え」」
ワンテンポ遅れて、この部屋にいる私以外の三人が驚きながら声を揃えた。
「すみませんっ! あの、今まで連絡取る人がいなかったので……必要がなくて」
「そうか。じゃあ、買いに行こう。俺は今日仕事をするから帰る時は母さんに連絡してもらおう。その後、一緒に買いに行こうね」
穂貴さんはなぜか私の頭をなでなでした。するとお母様が「穂貴くん、そろそろ行くから離してくれる?」と彼に問いかけて、穂貴さんはやっと手も離してくれてお茶をしに行くことになった。