激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
それに、如月家の娘として引き取られたのに来た当日には別邸に住むように言われたのだ。別邸といっても、本邸を見たことがないのでなんとも言えないが……一軒家ほどの小さな家で使用人は一応一人いて、水道も電気も通っているしキッチンもあって調理器具もある。なんでも揃っているからとても充実していたんだけど。
「相手は、フジノ出版の副社長の藤乃穂貴くんだ。とても優秀な方で、旧華族なのだよ」
「……ふじの、さん」
「あぁ。だから、明日会うことになった。だから当日は、車を出そう」
だけど、そんな毎日は終わりらしい。しかも、車まで出すなんてそんなにすばらしい人なのだろうか。
私が考えている間に旦那様はそれだけ言って、スキップするように出ていった。