激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜


 翌日、別邸には普段なら絶対来ないようなお義母様とお嬢様が訪れていた。


「本当にあなたのおかげで(わたくし)は、結婚しなくてすみましたわ。ありがとう」


 奈津子お嬢様は上等な生地のワンピースを着ていて、ザお嬢様と言った感じだ。仕草も上品で綺麗で……旦那様方が溺愛されるのもわかる。
 きっとこの言葉は本心だと思うし、両親から私が自分の代わりに結婚することを聞かされているんだと思う。
 確かまだ高校生だと聞いたし、お金持ちはどうかわからないが結婚は早いと思う。


「……そんなことは、」

「いいえ! あなたのおかげよ! 藤乃さんは家柄もスペックもいいのだけど気難しい方だと聞いたの。野暮ったいだとか噂があるくらい……そんな人のところに幸せになれるかわからない男性の元にお嫁には出したくないもの」


 そんなことはない、と言おうと思ったのにお義母様は私の手を握りそう言った。


「そうですね。あの……奥様、お嬢様。今回は素敵な洋服まで用意していただいてありがとうございました。このような物を用意していただいて」

「そんなのいいのよ。それ、なっちゃんのお古だしお金はかかってないわ」


 そうなの? こんなに綺麗で素敵なお洋服なのに?


「そうなのですね。ですが、本当にありがとうございます」


 用意していただいた洋服は、シフォン素材やレースをあしらってある優雅なピンク色のワンピース。長袖でワンピースケープ風のレースデザインが上品でウエストはベルトできゅっと絞ったシルエットがありロング丈で裾には綺麗なレース刺繍がされている。こんな服は最初で最後になるのではないかと思ってしまうくらいに素敵だ。


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