シークレット・ガーデン~英国紳士の甘い求愛と秘密~
18.大都会
「やっぱりこっちは活気がすごいね」
「人口がもう全然違うからね」
レイクビューの部屋でのお泊まりから数日後。
莉緒はロンドンの街にいた。
歴史的な建築物に目を奪われていると、次には近代的な高層ビルが顔を覗かせる。目まぐるしく変わる景色に、レオンの運転する車の助手席で莉緒の目はあちこちに忙しなく動いていた。
数日前、実はそろそろ戻らないといけないんだ、とレオンから切り出された。
それで莉緒は初めてハッとしたのだ。
すっかり頭から抜け落ちていたが、莉緒と違って彼は働いている。たまたま今までがホリデーだっただけ。
彼の休みは有限で、三週間だったらしいその期間はもう終わりに差し掛かっていたのだ。
仕事が始まるからロンドンに帰らなくてはならないと切り出したレオンは、莉緒に言った。
“ここ、リオになら貸してもいいよ”
と。
“でも僕としては、一緒にロンドンまで来てくれた方が嬉しい。恋人と離れ離れは耐え難い”
そう続けられて、甘えすぎではという気持ちを一抹抱えつつも、彼の望むようにしたいと莉緒は湖水地方を後にすることを決めた。それに恋人と一緒にいたいという気持ちは莉緒としても同じだ。
「こっちは都会だからごちゃごちゃしてるし人も多いけど。でもその分見て回れるところも沢山あるし、ゆっくり過ごせるスポットもあるし。別に観光は義務じゃないから、ウチでのんびりしてくれててもそれもいい。……どこか行きたいところはある?」
そう訊かれたので、莉緒は頭の中にあるロンドン知識をぐるぐると巡ってみた。が、そうは急にここ! という場所が思いつかない。
「そうだなぁ、まずは近所のスーパーの場所が知りたいです」
なのでまずは生活に必要な場所をと思って言うと、その答えを聞いたレオンはおかしそうに笑った。
「了解、案内する」
信号が変わって、音もなくまた車が滑り出す。
二人で行くスーパーが、生活を共にしてるんだなぁという実感を与えてくれるのが莉緒はとても好きなのだ。レオンには伝わっていないようだけど。