白杖くんは、恋を知った
いつも通りの朝が来る。枕元に置かれた小学生の頃に買ってもらった目覚まし時計が鳴って、それを手探りで止める。ここまでは、きっとみんなと同じ朝。

僕、南恋雪(みなみこゆき)が目を開けると、そこに広がっていたのはぼやけた世界。水中の中で目を開けた時のような視界が広がっている。みんなはこんな見え方はしない。でも、ぼやけた世界が僕の見え方なんだ。

僕は小学生の頃までは、みんなと同じように見えていた。だけど、高学年になった時、目の病気にかかってしまったんだ。それが原因で、僕は視覚障害者と呼ばれる存在になった。

視覚障害者と聞くと、きっと多くの人は目の前の景色が全く見えないことを想像すると思う。だけど、みんなが一人一人違うように、僕たち視覚障害者も一人一人見え方が違うんだ。

僕は、光や色をぼんやり見ることができる。弱視ーーー別名ロービジョンと呼ばれる状態。全く見えない人のことは全盲と呼ぶよ。

弱視の人でも、光が強く見えてしまう人もいれば、暗いところが見えなくなってしまう人、周辺から視野が欠けている人や、視野の中心が欠けている人もいるんだ。
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