白杖くんは、恋を知った
胸がドキドキとうるさい。そんな中、僕の体に温もりが伝わり、ふわりとシトラスのような香りが広がった。僕は今、星来さんに抱き締められる。

「あんたが、目が不自由とかそんなの関係ない。お菓子や料理が作れて、明るくて、優しくて、話をニコニコ聞いてくれて、そんな恋雪にあたしは恋してんだよ。……お願いだから、離れてかないで。スポーツ観戦がしたいなら、あたしが横でしっかり解説する。映画は音声ガイドがあるだろ。イルミネーションとかお花見とか水族館とか、色んな場所を二人で楽しみたい」

嬉しい。嬉しいのに、また泣きたくなる。胸の中が熱い。燃えているみたいに熱くて、だけど幸せで。……ああ、僕はずっと前から。

「僕も、星来さんが好きです。ずっと前から」

ニコリと僕が微笑むと同時に、ふわりと唇に何かが触れた。ぼやけた視界に、星来さんの肌色がすごく近く見えてーーー。

「あたしも好き」

星来さんの眩しいくらいの笑顔が、見えた気がした。
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