白杖くんは、恋を知った
さて、そろそろ身支度をしないとお姉ちゃんに怒られちゃうな。グッと大きく体を伸ばした後、僕はベッドから降りてクローゼットへと向かう。

視覚障害を持っている人は、物の位置を毎回正確な場所に置かなくちゃいけない。みんなは違う場所に置いても、パッと商品を見ればすぐにわかる。でも僕たちはわからないから、常に物は同じ場所へ置かなくちゃならない。だから、家の中では何を取るのも迷わない。

クローゼットを開けて服を選ぶ。服も同じ位置に置いてあるから、迷うことなく服を出せる。

「よし、今日はこれとこれ!」

今日のコーデは、グレーのパーカーに白のスラックス。ブカッとした格好が好きで、引き出しには色んな色のパーカーが置いてある。お姉ちゃんからは、「もっと色んな服を着たらいいのに」なんて言われるけどね。

廊下に出て、壁伝いに歩きながらリビングへ向かう。おいしそうな匂いが漂ってきた。今日の朝ご飯はハムエッグだ!
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