白杖くんは、恋を知った
甘いはずのクッキーが、何だかしょっぱく感じてしまう。僕は慌てて目を擦り、明椅子から立ち上がった。

「そうだ!おばあちゃんたちにこのクッキー、届けよう!」

暗くなった気持ちを誤魔化すよう、わざと明るい声で言う。善は急げと言うし、すぐに僕はクッキーを袋に詰めていつも出かける時に背負うリュックの中に入れた。

「行ってきます」

誰もいないけど、いつも言ってしまう。鍵をかけ、僕は歩き慣れた道を進んだ。

えっ?ぼんやりとしか見えないのにどう道を歩くかって?もちろん、手ぶらで歩いているわけじゃないよ。

視覚障害を持っている人は、道を歩く時は白杖と呼ばれる杖を持って歩くんだ。お年寄りが使う杖よりずっと長くて、白いのが特徴。この杖で障害物がないか確認しながら歩くんだ。

そして、僕が歩いている道には点字ブロックという視覚障害の人が安全に歩けるように設置されたブロックがあるから大丈夫。点字ブロックには二種類あって、一つは誘導ブロックと言って進行方向を示すもの。線が並んだ形をしているから、線状ブロックとも呼ばれているよ。
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