38年前に別れた君に伝えたいこと
次の日曜日に、彼女と科学館の前で待ち合わせた。
待ち合わせ時間に遅れないよう20分前に着いたのに、彼女は既に先にきていて僕を待っていた。
「おはよ、早いね、待たせちゃった?」
「大丈夫、嬉しくって早く着き過ぎちゃった」
制服姿しか見てないせいか、私服姿の彼女が新鮮に見えていた。
白いブラウスに、膝下10cmぐらいの焦茶色のフレアスカート 、斜めに被ったベレー帽が可愛い。
「なんか、いつもと感じが違うね」
僕の視線が気になったのか、
「圭くん、恥ずかしいから、あんまり見ないでくれる」
そう言われて初めて、ついつい見入っていた自分に気づいた、、
「ごめんね、、そんなに混んでないし、まだ開館まで時間があるから何処かで座って待っていようか」
科学館の入口の前には、同じく早く着き過ぎたらしい若い子達が散らばって雑談をしていた。
「美幸ちゃん、最近林さん元気ないよね?
僕にちょっかい出してこなくなったし」
「あのね、、圭くんに話した方が良いのかなぁ、どうしようか、、
実はね、林さんも圭くんの事が好きだったの」
「えっ、それなのに美幸ちゃんを応援してたの?」
「私も知らなくて、圭くんにOKもらった事を報告しようと思って電話したの、その時に初めて教えてくれた。
私が何で黙ってたのって聞いたら、
『美幸ちゃんに、先に相談に乗ってって頼まれたから、言うタイミングを逃しちゃったんだ。それに私より美幸ちゃんの方が絶対にお似合いだから。私の分も幸せにね』って、
林さんの優しさに、私泣いちゃった」
「そうなんだ、僕はそうとも知らず酷い事言っちゃったなぁ」
「えっ、林さんに何か言ったの?」
「美幸ちゃんには自分で返事するから、君はもう要らないって」
「圭くん酷い! 嫌いになっちゃうよ」
だから、知らなかったんだからしょうがないと思うけど、、
秘めたままの想いは伝わらない、もう少しの勇気があれば未来は変わるかもしれない。それが林さんと彼女の違いなのだろう。