38年前に別れた君に伝えたいこと
第一章 君嶋 圭吾
1.喪失
制服姿の短い髪の女の子が
"さよなら"を言いながら去って行く
その後ろ姿に向かって、必死に呼び止める僕がいる
どんなに一生懸命追いかけても
二人の距離は縮まらない
離れて行くばかりだ
彼女を見失う前に
僕の前から消え去ってしまう前に
気づいて欲しくて
大声で叫んだ
僕の声は届かないのか、、
彼女は振り向いてくれない
名前を呼ぼうとして気づいた
彼女は、何という名前だったか、、、
『もう、私の事は忘れちゃった?』
何処からともなく、
僕に語りかける声が聞こえた
古い記憶の片隅に置きっぱなしにした、
彼女の名前を思い出すことができなかった